2022.06.30
「ドラゴンボール」では、死闘を経るにつれてキャラクターの成長が見られたり、キャラクター同士の人間模様に厚みが増していきます。以前の記事ではピッコロと悟飯の「師弟」関係に注目しましたが、今回は「ライバル」として読者からも人気を集める、悟空とベジータの関係に迫ります!
原作204話で初登場したベジータ。当初はドラゴンボールを使って永遠の命を得るべく、ナッパを連れて地球に侵略してきました。その後、いくつもの闘いを通じて、次第に悟空と共闘していくようになります。
同じ戦闘民族サイヤ人でありながら、育った環境も闘いについての考えも大きく異なる2人。今回はそんな悟空とベジータの関係について、競争心やライバルを専門に研究されている心理学者・太田伸幸先生に解説していただきました。
語り手:太田伸幸先生
中部大学現代教育学部 現代教育学科准教授。名古屋大学大学院教育発達科学研究科、博士(教育心理学)。「ライバル」という対人関係・対人認知に関する研究、競争場面における目標認知・競争心に関する研究、講義ツールの利用と受講意欲、授業評価の関連に関する研究を行う。著書・論文に「ライバル関係の心理学」「ライバル認知の生起過程に関する研究―半構造化面接を用いた事例的検討―」など。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き!
Twitter: @_maishilo_
——同じサイヤ人である悟空とベジータは、当初は敵同士だったものの、物語が進むにつれ共闘する場面も増えていきます。太田先生はこのふたりの関係を見てどう感じましたか?
太田:お互い協力すべきところは協力し、対立して強さを争うこともある。周りから見たら、まさにふたりはライバルではないでしょうか。
ただ、本人たちもそう思っているとは限りません。ベジータは悟空をライバル視しているように見えますが、 悟空の方はそもそも誰かをライバル視することがなさそうに思います。
悟空は、ライバル意識よりも「もっと強くなりたい」という気持ちの方が強そうですよね。
——悟空とベジータで、お互いに対する意識に違いがあるんですね。
太田:そもそもライバルは、片思いの関係が多いんですよ。
心理学の調査で「ライバルだと思っている人はいますか」と尋ねると、半分以上の人が「はい」と答えます。でも、そのうち相手にもライバルだと思われている人はそこまで多くない。
ライバル関係の場合、恋愛のように互いの気持ちを確認することがあまりないので、片方だけが「あいつはライバルだ」と思っていることが多いんです。
——悟空とベジータは、最初は敵同士として出会いましたが、徐々に関係が変化していきました。これは現実でもあり得るのでしょうか?
太田:悟空とベジータは、物語が進むにつれ共通の目標ができて共闘しますよね。
共闘すると、知らない面を知ることもあるし、相手の強さを認めるきっかけにもなります。それが互いの信頼へと繋がり、最終的にライバル関係となるのは現実でも十分あり得ることです。
——なるほど。悟空とベジータの関係は心理学的に見てもリアリティがある関係なんですね!
——現実世界での「ライバル」についてお聞きしたいのですが、そもそもライバルという存在は、いた方がいいのでしょうか?
太田:ライバルがいることの一番大きなメリットは動機づけです。「この人に勝ちたい」という目標が目の前にあると、頑張れることが多いですよね。
ただ、気をつけた方がいいのは、勝つことにこだわりすぎてしまうことです。勝つことへのプレッシャーが大きくなると、メンタルが弱ってしまうことがあります。
——ベジータは勝つことにこだわる描写が多いように思います。
太田:ベジータは相当メンタルが強いんですよ。
悟空の強さを目の当たりにしても折れないのはすごいです。このメンタルの強さは、 人間ではなくサイヤ人の血だなと思います。
——私たち人間が、ベジータのようにメンタルを強くする方法はあるのでしょうか?
太田:うーん……あそこまでメンタルを強くするのは、あまりおすすめしません。というのも、メンタルが強すぎると周囲に負担をかけてしまうことが多いんです。みなさんのまわりにも「メンタルが強くてストイックだけれど、他人の気持ちには無頓着」という人がいませんか?
悟空の妻のチチもベジータの妻のブルマも、かなり気が強い女性ですよね。サイヤ人のように強靭なメンタルの人と渡り合うためには、身の回りの人にも(チチやブルマのような)メンタルが求められてしまいます。
——ライバルに話を戻すと、「ライバルにするならこういう相手がいい」というおすすめはありますか?
太田:比べやすいのは、自分と近い存在の人です。ベジータが悟空をライバル視しているのも、同じサイヤ人であることが根っこにあると思います。
心理学では「 社会的比較」と呼ぶのですが、人間は(他人と)比較することで自分を正確に評価したがる生き物なんですね。この社会的比較は、近い存在の方がやりやすいです。
——ライバルの中でも、「自分より実力のある先輩に追いつきたい」といった"上"を目標にするパターンと、「後輩に追い抜かされないように頑張ろう」という"下"を目標にするパターンがありそうです。
太田:多いのは上を目標にするパターンです。それには、「周りから見ると同じぐらいの実力だが、本人は相手の方が上だと思っている」というケースも含みます。
こういう相手は、いまの自分よりちょっと先のことをやっていることが多いので、モチベーションが湧きやすく、実力アップにつなげやすいですね。
——お話を聞いていると、ベジータにとっての悟空のようなライバルがほしくなってきますね!
——ベジータの性格についても深堀りしたいのですが、彼は自分の強さを誇りに思っているように感じます。
太田:ベジータは他のサイヤ人や人間に比べて、プライド――心理学でいう「自尊感情」が高い方だと思います。自尊感情とは、自分の中における「自分の価値」の高さのことです。
一般的に、小さい子どもは自尊感情が高いです。なぜかというと、子どもはまだ自分のことを客観的に見ることが難しいから。大人になると、周りと比べることができるようになるので、適切な自尊感情に落ち着いていきます。
自尊感情が高い人は、大人になってもこの自尊感情が崩れなかった人だと言えます。特に、自分にとって「価値があること」と「できること・得意なこと」が同じだと、自尊感情は高くなります。
ベジータは、サイヤ人であることもあって「強さ」に価値を置いています。そして実際に本人も強いので、 自尊感情は高くなりやすいんですね。
——自尊感情は高い方がよいのでしょうか?
太田:高すぎるのは問題ですが、ある程度はあった方がいいです。自尊感情が高すぎると、崩れたときにしんどい思いをするんですよ。ほどほどぐらいがいいと思います。
——ベジータの自尊感情が高いというお話がありましたが、これは彼が王子であることも関係しているのでしょうか?
太田:そうですね。王族であるベジータは「強くなければならない」と周りからプレッシャーを与えられ、しかも「実際に自分は周りより強い」と自覚する環境で育ったのではないかと推測できます。
それから、部下を率いる存在だった点も、心の持ち方を変えたと思います。
——同じサイヤ人でも、悟空とベジータでは性格に違いがあります。
太田:競争に対する考え方が違いますよね。ベジータは「悟空に勝つ」が目標ですが、悟空は「競争を通じて自分が強くなる」が目標です。相手をやっつけるのではなく、やっつけることで自分が強くなりたいのが悟空だと思います。
——2人とも「強くなる」というゴールは共通しながら、その過程にある動機が異なるんですね。それで思い出しましたが、悟空は地球に侵略してきたベジータを戦闘不能にしたのに、仲間の反対を押し切って見逃しました。
太田:悟空は「闘って倒したい」というよりも、「闘いながら強くなりたい」と思っていて、競争そのものを純粋に楽しむことができるタイプなんでしょうね。ベジータと同じく、悟空も相当メンタルが強いと思いますよ。
——さすがサイヤ人ですね。
太田:ふたりを見ていると、ベジータの方がよほど人間くさいと感じます。自尊感情が高いところも、強い自分であるために努力するのも、すごく人間らしくて共感できますよね。
地球で育っていないベジータが人間らしく、地球で育った悟空がサイヤ人らしいのは、僕もドラゴンボールを読んでいて面白い点だと思います。
——ベジータが悟空に勝とうと努力し続けた理由がよくわかりました。貴重なお話をありがとうございました!
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