2022.04.21
アニメ「ドラゴンボールZ」の初代エンディングテーマとして、リリースから30年以上を経た今も高い人気を誇る楽曲「でてこいとびきりZENKAIパワー!」。
「ドラゴンボールZ」を見ていた方々にはなじみ深いこの楽曲。実はところどころに謎の呪文が⼊っていて、逆再⽣すると「あーこの曲を作ったのは清⽔賢治、池毅……」と制作メンバーの名前が出てくるというなんとも不思議な曲なんです。
ドラゴンボールファンの間でいまだに語り継がれる、このユニークな仕掛けを考えたのは、作曲を担当した池毅さん。武蔵野美術大学を卒業後、独学で音楽理論を勉強しながら作曲家の道に入られたそうです。
今回は、仕掛けの背景や楽曲の制作話、当時のレコーディング現場の雰囲気などについて伺いました。合わせて「魔訶不思議アドベンチャー!」の制作話も聞くことができ、ドラゴンボールのアニメを楽しんでいた方にはぜひとも読んでいただきたいインタビューとなりました。
※取材はリモート、撮影は新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じた上で実施しました。
語り手:池毅さん
1953年香川県生まれ。1977年武蔵野美術大学造形学部卒。1979年 He-Story(ヒストリー)メンバーとして東芝EMIから「結婚します」でデビュー。シングル5枚アルバム1枚をリリース。1981年 解散。以後作曲活動。ドラゴンボールの好きなキャラはウミガメ。「じつは、わたくし…カメなんです」というセリフが忘れられない。
ドラゴンボールで関わった楽曲として、『ドラゴンボール』オープニングテーマ「魔訶不思議アドベンチャー!」同エンディングテーマ「ロマンティックあげるよ」『ドラゴンボールZ』エンディングテーマ「でてこいとびきりZENKAIパワー!」「僕達は天使だった」他アルバム曲多数がある。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き!
――「でてこいとびきりZENKAI パワー! 」という曲そのものは、どのようなイメージで作曲されたのでしょうか?
池:楽曲全体として「不思議な空気にしたい」とは思っていました。
ドラゴンボール自体がすごく不思議な世界観だと思うんですよ。過去から未来まで、いろんな時代、次元のキャラクターが登場する。その不思議さを音で表現できればと思っていました。
――ドラゴンボールの原作から感じた印象を、音楽に落とし込んでいったのですね。
池:そうですね。「面白くなればいいな、楽しい雰囲気がいいな」という感じで、おもちゃ箱をひっくり返したようなイメージの曲にしました。コーラスや掛け声も含めて、いろんなものを詰め込んだ仕上がりにしています。
あとは、オープニングに比べるとエンディングってちょっと遊びやすいんですね。オープニングは派手な曲が多いんですけど、エンディングはもっと自由にやれるので、遊園地みたいな曲を作ったら面白いんじゃないかと思って取り組みました。
――楽曲全体にオリエンタルな雰囲気が漂っていますが、これも原作のイメージを意識されたのでしょうか?
池:はい。オリエンタルな雰囲気の中に、ポップ・レゲエなどの要素を取り入れて、融合させています。
『CHA-LA HEAD-CHA-LA / でてこい とびきりZENKAIパワー!』(7インチシングルレコード)
――制作の裏側についても聞きたいのですが、「でてこいとびきりZENKAIパワー! 」は歌詞と曲どちらが先に作られたのでしょうか?
池:この曲の場合は、まずメロディーをスキャット(※「ラララ」のような意味を持たない言葉で歌うこと)で作り、それに歌詞をつけてもらいました。歌詞は(ドラゴンボールに脚本としても参加している)荒川稔久さんが書いてくれました。
――最初に歌詞を見たときはどんな印象を持ちましたか?
池:レコーディング当日に初めて拝見したんですが、とてもポップでカラフルな歌詞で、曲のイメージにピッタリだなと思いました。脚本も書かれている荒川稔久さんならではのフレーズもあって、「これはユニークで面白い歌詞だなあ」と感じましたね。
――「荒川稔久さんならではのフレーズ」というのは、例えばどのような点に感じられましたか?
池:冒頭の「駆けてくるよ アップル色モンスター 飛んでくるよ ナッツの香りエイリアン」がまさにそうですよね。色覚と嗅覚にまで訴えかけてくるというか。
ボーカルのMANNA(マナ)さんとメロディーへの乗せ方を相談していくときも、歌詞のユニークさを引き出せるように考えました。言葉の力をさらに増幅できるコーラスをいれたり、掛け声を入れたりして、よりカラフルな音になるようにしています。
――大変興味深いお話です! 他に、制作現場で「ドラゴンボールだからできたこと」などはありますか?
池:原作がなんでも受け入れてくれそうな深い懐を持った世界観なので、「どんなに遊んでも面白がってくれそうだな」とは感じていましたね。
レコーディングの現場でも自由にやらせてもらえたし、「こういうアイデアを取り入れたい」と録音スタッフに言うと「それいいね、やろうやろう!」となるような空気でしたね。皆楽しんでやっていました。
――お話を伺っていると、「でてこいとびきりZENKAIパワー!」はとても楽しそうな現場だったんですね。
池:コーラスを私が重ねて録音するときも「ここにこういうエフェクトかけてみて」とか頼んで、協力してもらいました。結果的にいろんな声やフレーズが重なって、楽しい音源になりましたね。
――現場の雰囲気の良さもあって、この楽曲が生まれたんですね!
池:やっぱり自宅ではできない、現場のノリみたいなものがあるんですよね。おかげで、にぎやかで魔訶不思議な曲ができたと思います。
――「でてこいとびきりZENKAIパワー! 」を逆再生すると、制作に関わった人たちの名前が聞こえてくるというのはファンの間ではよく知られるお話ですが、これはどういう意図で作られたのでしょうか?
池:MANNAさんのキュートなボーカルを録音した後、さらにもっと賑やかで魔訶不思議な感じにしたいなと思っていろんなコーラスやかけ声を入れようと思ったんです。私一人で次々と重ねていきました。
その中で「イントロに呪文みたいなものを入れると面白いんじゃないか」と思いついたんです。映画『STAR WARS』シリーズで、言葉を逆再生したものを酒場に集まる宇宙人の言葉として使っているという話があって、その方法をやってみようと。
まずは言葉が必要になるので、プロデューサーの方や現場にいたスタッフさんの名前を入れることにしました。それを6ミリテープに録音、テープをそのままひっくり返して逆再生して48chデジタルマルチ(※)に取り込んで、さらにピッチを上げたりエフェクトをかけたりして……。そうすると、狙い通り呪文のように聞こえたんです。
※ デジタル録音形式の、マルチチャンネル録音機(テープレコーダー)
――「でてこいとびきりZENKAI パワー! 」の他に、「魔訶不思議アドベンチャー! 」と「ロマンティックあげるよ」も手掛けられました。それぞれどのような経緯で作曲を担当することになったのでしょうか。
池:どちらもオーディションでした。歌詞はもらっている状態で、10日間ぐらいで「ロマンティックあげるよ」を作って、残りの2日で「魔訶不思議アドベンチャー!」を作りました。
そしたら「両方受かったよ!」という連絡をいただいて、そこからドラゴンボールとの関係が始まったんです。
――そんな短期間で作曲されたのですね……!
池:作曲作業は早いですよ(笑)。 オープニング・エンディングが同時にオーディションで通るのは珍しかったようです。その流れで後に「でてこいとびきりZENKAIパワー! 」のエンディングの作曲も担当することになりました。
――この流れで聞いてみたいのですが、「魔訶不思議アドベンチャー!」の制作にあたって、特にこだわられたところはありますか?
池:「まかふしぎ」の「ま」を、「摩」ではなく魔法の「魔」にしているところです。
これは森由里子さん(作詞家)のこだわりで、よりドラゴンボールの世界観を反映するために熟語の「摩」とは違う「魔」をあえて使っているんです。明るいけれど、魔界のちょっとおどろおどろしいところも入っているイメージですね。
だから、作曲するときもそれを念頭に置いて制作しました。
――タイトルまでそんなこだわりが……!
池:はい。曲タイトル表記など本来の「摩」を使われるケースが多いですが、ドラゴンボールの世界観としてここはこだわる所なので、ぜひ「魔」を使ってほしいですね。
私はドラゴンボールシリーズではオープニングとエンディング計4曲を作曲させていただきましたが、素晴らしい原作と関われて、今もこの出会いに感謝しています。
写真左から『「ドラゴンボール」ヒット曲集』LP、『魔訶不思議アドベンチャー!』(7インチシングルレコード)
『CHA-LA HEAD-CHA-LA / でてこいとびきりZENKAIパワー!』(7インチシングルレコード)
写真:齋藤大輔
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