2021.12.17
ドラゴンボールファンの皆さんこんにちは。ライターのmegayaです。
最近になって漫画版の『ドラゴンボール超』を最新巻まで大人買いして、自分の中で20年ぶりくらいにドラゴンボールブームが来ている。悟空が強さを求め続ける姿は見ていてやはり気持ちが良い。
読み進んでいくうちに思い出したけれど、悟空って勝手に1人で強くなっていったわけではない。孫悟飯(じいちゃん)、亀仙人、かりん様、神様&ミスターポポ、界王様、ビルス&ウイス……。さまざまな師匠たちのもとで修業をしていたのだった。
そこで気付いたのが、ものごとをうまくなるためには単に修業するだけではなく「師匠」の存在が必要なんじゃないだろうか? ということ。全くの初心者でも、師匠から直接学べば、習熟度はもちろん、上達するスピードすら上がるのかもしれない。
そこで今回はその仮説を検証するために、「格闘ゲームの初心者がプロゲーマーに教わったらどのくらいうまくなるのか?」を実験してみたいと思う。
検証に使うゲームは、世界中でプレイされている対戦格闘ゲーム『ドラゴンボールファイターズ』(以下、ファイターズ)だ。
「なんで格ゲー?」と思うかもしれないが、僕がドラゴンボールの格ゲーを久しぶりにやりたいし、やっぱりドラゴンボールの醍醐味である「戦って強くなる」を体現できるから。
いや、べつに仕事を利用して遊びたいわけじゃないですよ。検証ですよ、検証。
ちなみに私の中でドラゴンボールのゲームと言えば、小学生の頃にやっていた『超武闘伝3』(1994年/SFC)や中学生でハマった『ドラゴンボールZ2』(2004年/PS2)で、最新の格ゲーであるファイターズは全くプレイしたことがない。
今回、ゲームを教えてくれる師匠としてお呼びしたのは、ファイターズの世界大会で優勝し、世界一の称号を持つGO1さんだ。いきなり頂点である。原作のストーリーだと、ブルマと出会わずに最初からビルス様に出会うようなものだ。
GO1さん:プロ格闘ゲーマー。CYCLOPS athlete gaming所属。ドラゴンボールファイターズ発売当時から日本で負けなしを誇り、EVO2019(Evolution 2019)、Red Bull Dragon Ball Fighterz World Tour Finals(2020年)で優勝を果たし、世界一の栄冠に輝いている。また、「MELTY BLOOD」や「ストリートファイターV」など多種多様なタイトルでも結果を残すマルチプレーヤー。反射神経や読みに優れた鉄壁の防御力は、プロでも破るのが困難だと言われている。原作で好きなキャラはベジータ。
検証のためにご登場いただくのが畏れ多いほどハイスペックな師匠に来てもらえることになった。師匠の強さについていけるか不安だが、とにかく練習あるのみ。よし、いっちょやってみっか!
勇み足でGO1さんと打ち合わせをすると、「まずはゲームのシステムを知った方が良いですよ」ともっともなアドバイスをいただいた。
ということで、発売元のバンダイナムコエンターテインメントさんに駆け込むと、なんとファイターズのプロデューサーである広木朋子さんが直々にゲームのおもしろさや特徴を教えてくださるとのこと。
世界一のプレイヤーに教えてもらう前に、生みの親にゲームを解説していただけるなんて豪華過ぎる。まさにハチャメチャが押し寄せて来ている状態だ。
ファイターズの生みの親、広木朋子プロデューサー
広木さんはジャンプでドラゴンボールを読み、SFCの超武闘伝をプレイして育った生粋のドラゴンボールっ子だ。その人が今やドラゴンボールゲームのプロデューサーなんだから夢がある。
広木さんによると、ファイターズ最大の魅力は「格ゲーの醍醐味である駆け引きあるバトルが、ドラゴンボールらしく爽快&ど派手に楽しめる」こと。「プレイする側も観てる側も楽しめますよ」とのこと。
ドラゴンボールのバトルは「目で追えないスピードで戦う」「空中を飛ぶ」「宇宙まで行く」といったハチャメチャさが特徴。それらを格ゲーのフォーマットで表現することに時間をかけたのだそう。
3on3で入れ替わりが自由なゲームシステムは、まさにドラゴンボールらしいハチャメチャなバトルを体感できる(修業モードの画面です)
さらに、よりドラゴンボールらしいバトルを再現するために格ゲーでは当たり前の「投げ技」の代わりとなる別のアクションを検討。それがパンチやキックを連続で繰り出す技「ドラゴンラッシュ」であり、ドラゴンボールらしさを演出している。
ドラゴンラッシュ(修業モードの画面です)
2Dのアニメ表現と3Dの立体表現を融合した2.5Dを採用したのも「ドラゴンボールのアニメを操作している感覚を味わってほしい」という想いがあったからだ。
悟空が修業した100Gの重力くらい重い原作への愛が、広木さんから伝わってくる!
特定の相手や場所などの条件下で勝利すると名シーンが再現される「ドラマチックフィニッシュ」の演出はまさにアニメそのもの
ファイターズでのバトルは、キャラクターが飛び周って連続攻撃(コンボ)を繰り出すハイスピードな肉弾戦も展開される。このコンボはゲームの勝敗を分ける重要な攻撃方法であり、コンボが重なると、アニメをそのまま見ているような爽快感を味わえる。
広木さんには練習方法として「修業モード(アーケードモード)」があることも教えてもらった。修業モードは単純なチュートリアルではなく、初心者が中級者になるための方法を、ドラゴンボールのキャラクターが教えてくれる。格ゲーの基礎である駆け引きを覚えられるそうだ。ありがてぇ……!
GO1さんとの練習日までには2週間ほどの猶予があったので、修業モードを利用して戦いに備えることにした。2週間みっちり修業したので、「戦闘力5の農民」から「亀仙人のところで牛乳配達しているときの悟空」くらいには強くなったはずだ。
さて、練習日当日。いよいよGO1さんに修業をつけてもらう!!! なお今回GO1さんとの練習に与えられた時間は2時間。
この記事の最後には「2時間でどれくらいうまくなったのか」を検証したいと思う。
本当にこの人が最強なのか……? と思うくらい腰が低くて驚いた
師匠、今日はよろしくお願いします。さっそくですが、「世界最強」を知りたいのでまずは勝負してもらっても良いでしょうか?
分かりました。本気でいきますね!
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もちろん悟空(体力ゲージ表示左)が私で、魔人ブウ(体力ゲージ表示右)がGO1さん。ボコスカにやられている
フルボッコでKO。GO1さんの体力は全く減っていない!!
な、なにも出来なかった……! ただただ、コントローラーを握っているだけの時間が過ぎていっただけ……!
原作で、双方の動きが速過ぎる戦いを見たときの「動きが見えねぇ……!」というヤムチャ状態をリアルで体感している。言い過ぎでも冗談でもなんでもなく、本当にGO1さんが何をしているのか全く分からないのだ。2週間の練習はなんだったのだ……。
苦し紛れに「そ、そっちはアケコン(アーケードコントローラー)使ってるじゃん! こっちはPS4のコントローラーなんだからね……!」と小学生のような言い訳をしようと思ったら、ファイターズの海外大会ではPS4コントローラー派の参加者もかなり多いらしい。ぐうの音もでない。
攻撃をする隙がありませんでした……! これで本当にうまくなるのか不安になる……。初心者はなにから始めれば良いのでしょうか?
まずはコンボを一つ覚えることをおすすめします! コンボを一つ習得すると戦略の幅が広がりますし、実戦で使えたら目標達成の楽しさも感じられてクセになりますよ。
コンボ練習って野球の素振りみたいに、ひたすら同じ動作を反復練習するのでしょうか?
そうです!ひたすら反復練習ですね。まずはコンボがミスなく100%出せるようになることが大事です。ミスなく出せるまでは、練習と実践をひたすら繰り返します。
うおお、地道ですね……!!
地味かもしれませんが、「コンボを一つ覚える」など具体的な目標を立てて練習するのが上達のコツです。一つずつ壁を超えていくことがモチベーションにもなっていくんですよ。
あとはゲームならではのシステムを覚えましょう。まずは「超ダッシュ」。
空中地上問わず使える技です。相手との距離を素早く詰められ、ヒット後は空中コンボに移行可能なので、攻撃の起点にもなります。弱い気弾(エネルギー弾)を弾きながら突進し、さらに自動で相手を追尾できる、非常に重要なシステムです。
さらに、場に出て戦っているキャラに加えて、控えの仲間が攻撃に参加できる「Zアシスト」も強力です。数的有利の状況を作れるのでガンガン使っていきましょう!
なるほど! 超ダッシュはわりかし使っているのですが、アシストに関しては戦うことに必死で手が回っていませんでした……! でも、GO1さんも実際に多用しているなら「使ってみよう!」となりますね。
ZアシストはキャラごとにABCと攻撃のタイプが3つずつ用意されているのですが、まずはCタイプがおすすめです。Cタイプはタイミングよく攻撃を入れるだけでコンボになりますよ!
「Cタイプは初心者におすすめ」は覚えておこう……! 家で1人で練習していたときと情報の質が段違いだ。師匠ってやっぱり大事なのかもしれない!
悟空が場に出て戦っているが、Zアシストで控えのベジータを出し、コンボをうまくつなげていく(修業モードの画面です)
うおお、確かにCタイプからのコンボは簡単だし気持ち良い!!!
ファイターズは3on3でキャラ入り乱れて戦えるので、キャラの選択とアシスト技の組み合わせ次第で戦い方のバリエーションは無数。幅広い戦略を楽しめるのもこのゲームの魅力ですね!
プレイしてみて分かるけれど、格ゲーって本当に奥深いんですね……!! やってもやっても極められそうにないです。
本当に果てしないですよ。それに、ファイターズのキャラクターは定期的にアップデートされて強さが変わるため、その度に一つずつ動作を調整していく必要があります。研究に終わりはないですね。
GO1さんは「うまい!」「上達が早い!!」と何度も褒めてくれるので、プレイしていて超気持ち良かった。強さは破壊神レベルだが、心は筋斗雲に乗れるくらい澄んでいるに違いない。
ただ試合になるとガチンコの戦闘モードになるので、やっぱり戦闘民族なのである。
たくさんのテクニックを教えていただきありがとうございます! あと……テクニック以外の秘訣ってなにかありますか……?
同じレベルのプレイヤーと切磋琢磨するのがおすすめです。ライバルがいると、競い合ううちに自然と強くなるんです。
まさに悟空とベジータのような関係ですね! GO1さんにもライバルはいるのでしょうか?
アメリカのSonicFox選手ですね。もともと僕が日本の大会で負けなしだったときに、SonicFox選手はアメリカの大会を総なめにしていました。
彼とはさまざまな大会の決勝で何度も戦ううち、いつしかライバル関係になっていましたね。
世界大会である「EVO2019」の決勝でも対戦した2人。動画は世界No.1となったGO1さんを讃えるSonicFox選手の様子(26分30秒〜)
彼が大会に来るだけで「絶対に決勝まで負けたくない」と気合いが入ります。お互いがお互いを倒すために準備して、大会でその成果をぶつけ合う。彼と戦う時間は僕にとってかけがえのないものです。
まさに悟空の「オラもっと強えやつと戦いてぇ」という状態ですね。
彼のプレイから学ぶことも多いですし、彼の存在自体が選手生活を続けるモチベーションにもなっています。大会前には一緒に練習することもありますよ。
やっぱり格ゲーって、誰かと対戦することが強くなる上では大事なんですね。
対人戦は気付きが多いんですよね。特に大会前のようなオフラインの環境だと「今の動きってどうやったの?」とすぐに議論ができる。対戦仲間と夜から始発まで対戦し続けるなんてこともよくあります。
すごいですね! みんなで精神と時の部屋で修業しているようだ……!
強くなるには、ゲームのテクニックをただ熟知すれば良いわけではない。肉体的にも精神的にも自分をコントロールするのが重要だそう。
GO1さんの場合、試合前のウォーミングアップ時には心拍数を測って試合中と同様の集中した状態(緊張状態)と同じ脈数になるように調節したり、速読で集中力や反射神経を一時的に高めるようにしている。
文庫本なら5秒くらいでバッと見る、読むのでなく「文字が入ってくる」イメージなのだそう
勝負はゲームをプレイする前から始まっているのである。
そして脳にブドウ糖を補給するため、アケコンの裏にラムネをしのばせている。
試合で疲れたときに食べるらしい。仙豆じゃん!
GO1さんのもとでみっちり2時間練習し、ファイターズの基礎もかなり分かってきた。それにしても楽しい。修業というより、友達の家に遊びに来たみたいな感覚になってきた。
師匠!! 最後に修業の成果を検証するため、1戦お願いできますか?
分かりました! 修業の成果を思いっきり発揮してください!
いよいよ最後の勝負だ……!! 2時間の集大成だ!!!!
その前に、私もラムネで回復して
走って心拍数を上げる
いざ勝負!!
私は悟空(体力ゲージ表示左)を操作。Zアシストからのドラゴンラッシュ炸裂!
またもやZアシストがうまく決まった!
おお、うおおお!!!! さっきより明らかに戦えている!!!
最初の対戦ではコントローラーを握っているだけだったが、なんとか反撃できるようにはなってきた。
これは……いけるかもしれない…………! プロに一矢報いることができるかもしれない…………!!
まあ、当たり前ではあるがプロの壁はそんなに低くない。攻撃に転じられるようになっただけで、基本的にはボッコボコである。ヤムチャである。
ただ、この2時間は無駄ではなかった。超ダッシュ、アシストの使い方、ガード、コンボ……などなど、GO1さんに教わったことが血肉となったのではないか。たったの2時間ではあるが、明らかにうまくなったと感じる!
よし、いけるかもしれない! もう1回やりましょう! もう一戦したら3体のうち1体くらい倒せるかもしれない!!!
調子に乗ってお願いした結果、相手に全くダメージを与えられないまま負けた(パーフェクトで負けた)。ギャグマンガみたいなベタ過ぎる展開になってしまった。
ちなみに、記事中だと数回しか対戦していないように見えるが、実際はGO1さんの予定ギリギリまで何度も勝負してもらった。合計で10回以上は対戦させてもらえたんじゃないだろうか。本当にありがたい。強い人というのは心も広い。
そして「ゲームって改めて良いなぁ」と実感した1日でもあった。「プロ格闘家と子どもが本気で戦う」という可能性はないけれど、「プロゲーマーと子どもが本気で戦う」可能性は物理的になくはないのだ。ゲームは誰であれ対等に勝負ができる、究極に平等な実力の世界なのかもしれない。
せっかくGO1師匠に教わったのだから、なにか目標を作って、それを達成して、この記事を終わりにしたいと思った。
いろいろと調べてみた結果、修業モード(アーケードモード)の難しいモード(ハードモード)をAランクでクリア(ダメージも少なく、素早くクリア)すると隠れキャラの超サイヤ人ゴッドSSの悟空とベジータが使えるようになるという情報を見つけた。
これは分かりやすくて良い目標だ。「ハードモードをAランクでクリアする」を目指してひたすら練習だ!!!
GO1師匠がキャラクターごとの戦い方を動画でレクチャーしてくれているので、それもめちゃくちゃ参考にした。隣にいなくても画面越しに師匠を感じている……!
また、GO1さんに「人のプレイ動画を見ると勉強になりますよ」と教えてもらっていたので、大会の動画を何度も見た。練習してから見直すと、みんなコンボのつなぎ方がえげつない……。
「自分なんてまだまだなんだ……」と思ったが、これが良い刺激になり、コンボの練習と実践をひたすら繰り返すことができた。
(修業モードの画面です)
コンボの練習は最初はつらかった。ひたすら地味だし、実戦でなかなかうまく決まらず、ストレスも溜まった。
ただ、だんだんとコンボがつながるようになってくると、それが快感になった。実戦でコンボが決まったときにはアドレナリンがドバドバ出る。うおお、うまくなっている……! と実感できるのが最高に気持ち良い。
(修業モードの画面です)
1日2時間ずつくらい練習して、1カ月弱くらいでなんとか目標をクリアできた。めちゃくちゃ苦労した……!
何度も投げ出そうと思った。でもクリア後はめちゃくちゃ達成感を味わえた。そもそもゲームに限らず「何かを練習してうまくなる」という喜びを久しぶりに感じられた気がする。
さて、「格闘ゲームの初心者がプロゲーマーに格闘ゲームを教わったらどのくらいうまくなるのか?」という冒頭の問いに立ち戻ると、検証時間は少ないながらも、「教わる前と比べて飛躍的にうまくなった」と言えるんじゃないだろうか。
ただ、うまくなるスピードというより、「うまくなるためのテクニック」や「コンテンツの奥深さ」を知るという側面が大きかったようにも思う。
素人では分かりづらい深みを教えてもらって「本質的な楽しさ」を知れたから、練習にのめり込め、結果としてうまくなれたのだろう。
やはり師匠の存在は偉大だ。悟飯がいつまでもピッコロを慕っている気持ちが今なら分かる気がする……!
今、ハードモードをクリアして「オラもっと強えやつと戦いてぇ」という気持ちになっている。さらに練習を積んで、いよいよ次は大会に出るぞ!!!
著者:megaya
エンジニア兼ライターをやっています。 デイリーポータルZなどでも記事を書いています。兄弟さえいれば幸せ。
@megaya0403
note
撮影:小野奈那子
このサイトは機械翻訳を導入しています。わかりにくい表現があるかもしれませんが、ご了承ください。
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