2021.12.23
『ドラゴンボール』セル編で登場した謎の青年。それは、タイムマシンに乗って未来から来たトランクスでした。「この青年は誰だ!?」「未来にはタイムマシンがあるの!?」とワクワクした方も多いのではないでしょうか。
タイムマシンで過去と現在、未来を行き来するトランクスの姿、何よりブルマの技術力に感動しながら、一方で「時間移動ってそんな簡単にできるの?」と疑問に感じた方も少なくないでしょう。
では、現実世界で、いったいどうすれば時間を移動できるのでしょうか。今回は宇宙理論を研究する二間瀬敏史・京都産業大学教授に、そんな率直な疑問をぶつけてみました。タイムマシンやタイムトラベルの仕組みから、時間移動の条件とともに作品を深掘りするためのエッセンスを学びます。
タイムトラベルの気の遠くなるような難しさ、その困難を乗り越えてタイムマシンを開発したブルマのすごさに思いを馳せる「時間旅行」へ皆さんを誘いましょう。
語り手:二間瀬敏史先生
京都産業大学理学部宇宙物理・気象学科教授。一般相対性理論・宇宙理論専門。暗黒物質や暗黒エネルギーの重力レンズを用いた観測的・理論的研究に取り組む。「ドラゴンボール」は連載当時、ジャンプ本誌で読んでいた。
聞き手:ぬっきぃ
本業は取扱説明書のイラスト、テクニカルイラストを作成するテクニカルイラストレーター。デイリーポータルZなどで工作を用いた記事を得意とするライター。
※取材はリモートで実施しました
——『ドラゴンボール』では、未来のブルマが1人でタイムマシンを造っていました。現実世界でタイムマシンを造ることは、理論上可能ですか?
二間瀬:それはまだわかっていません。ですが、物理学では「タイムマシンはできない」とも証明されていません。タイムマシンができる可能性はある……と言っておきましょうか。
——タイムマシンは研究段階なんですね。
二間瀬:現時点で、時間を早く・遅く進めることは可能だとわかっています。極端に変えることはまだできませんが、非常に小さな割合で時間の進み方を早く・遅くすることはできます。それには、光速と重力が条件になります。
——光の速さに近づくと時間が遅れる……タイムトラベル系の映画でよく見かけます。重力は初耳でした。
二間瀬:全て話すと長くなってしまうので割愛しますが、相対性理論では、重力が強ければ強いほど時空に歪みが生じ、時間の進みが遅くなると説明しています。たとえば太陽は地球より重力が強いので、太陽の1秒は、地球の1秒に比べて長いと考えるんです。
——重力が強ければ強いほど、時間がゆっくり進むんですね。
二間瀬:同じように、ブラックホールも地球と比べると重力が強いので、ブラックホールの近くの1秒は地球上での10~20年になります。このように、時間は全てが同じように進むわけではなく、場所や星によって違います。
——タイムマシンの話に関係してきそうですね。タイムマシンが造れるかどうかはまだわからないというお話でしたが、人間が過去・未来を行き来するのはそもそも可能なのでしょうか?
二間瀬:未来に行くことは、理論上はそんなに難しいことではないんです。重力の強い場所で時間がゆっくり進むことは、さっきお話ししましたね。
たとえば、実現できるかはさておき、地球からブラックホールに行くとしましょう。10秒だけブラックホールにいて、戻ってくる。戻ってきたとき、地球上では10秒よりもはるかに長い時間が経っており、本人からすると未来に移動しているわけです。
※ライター作成
問題は過去に行けるかどうか。こちらはまだわからないんです。一方で、逆行できないという証明もない。「非常に小さな物、たとえば素粒子などを短い時間であれば過去に戻せるだろう」とは言われています。
——素粒子ぐらい小さい物で可能。ということは、人間で実行できるまでに……。
二間瀬:かなりの時間がかかるでしょう。ピンポン球・野球のボールなど、段階的に検証していくと考えられます。ですから、現段階では「それはわからない」という答えになります。タイムマシンを造る論文もありますが、そのテーマは「どうやって過去に行くか」を主とした論文なんです。
——では、未来の地球の文明が発達していることを願ってブラックホールに数十秒滞在し、数百年後の地球人に過去への戻り方を聞きに行く。そういう手段もあるってことですか?
二間瀬:それもありですが、すでに銀河系のどこかには、我々よりはるかに進んだ文明を持っている惑星があるかもしれません。そういう惑星を見つけて、住んでいる人たちに教えてもらう手段もあります。
——タイムマシンを自力で作ったブルマがいかにすごいか、改めて実感しますね……。
——作中のタイムマシンは楕円体に足がついたような形の乗り物でしたが、もし人間が使えるタイムマシンが実現するとしたら、どのような形状になると考えられますか?
二間瀬:乗り物と空間の2通りがありえるのではないかと考えています。光より速い速度が出せる乗り物か、時空を曲げて、近道をつくるのです。
——光より速く動く乗り物……あれ、今って光が1番速いんですよね?
二間瀬:今の物理学では光が1番速く、それ以上はないと考えられています。なぜ光が速いかというと、光の質量がゼロだからなんです。質量がゼロでないものを加速すると、その質量は光速度に近づくにつれ限りなく大きくなって、光速に決して届くことはありません。質量がゼロならこれが起こらず光速度で動けるのです。
——光速以上のスピードで移動するには、少なくとも自分の質量をゼロ以下にしないといけないということですか?
二間瀬:もちろん今の常識ではそれはできないけれど、今後もできないかはわかりません。「できない」と証明されていないから。
——なるほど。空間の方は、精神と時の部屋のようなイメージですかね。
二間瀬:現実世界の場合、過去へのトンネルのような構造をつくることはできるとされています。そのために、どういったエネルギーが必要になるのかを研究している人もいますね。
——その話にも関連しそうですが、タイムマシンを動かす燃料はどのようなものになるのでしょうか。
二間瀬:現在の常識は、正の質量を前提としています。ですが、負の質量が存在することも研究上わかっています。正の質量を負の質量でキャンセルして、質量エネルギーをゼロにし、光速で壁を通り抜けるとか。そういうことはできるかもしれません。
——燃料は負の質量。ちょっと想像がつきませんが……。
二間瀬:全く荒唐無稽な話でもないんですよ。負の質量の存在は、すでにさまざまな議論がされています。
現在の宇宙の70%は、負の質量でできていると考えられています。宇宙全体に負の質量が充満していて、それによって宇宙は光速より速い速度でどんどん広がっている。これは天文学者や物理学者が認めていることです。
負の質量を自由に扱えたら、我々の生活に大いに影響するでしょう。
それこそタイムマシンで、未来や過去へ行き来できるようにもなると思います。
——でも、どうすればその負の質量を扱えるようになるんでしょうか。
二間瀬:まさに、そこが課題です。ただ、石油だって、昔は汲み出すことができなかった。文明が進んで石油を汲み出せるようになり、石油を燃やしてエネルギーを得ることができました。負の質量を得られる可能性も、あるんじゃないかと思います。
——おお。そう考えると少し希望が出てきました!
タイムマシンの仕組みがなんとなくわかったところで、次はパラレルワールドとタイムパラドックスについて聞いていきたいと思います。タイムパラドックスは、自分が未来・過去を行き来することで生まれてしまう矛盾のこと。時間移動を可能にするには、この矛盾をクリアしなければなりません。
ドラゴンボールでも、トランクスが人造人間の弱点を探るため、未来から過去に来たことによりその世界の歴史が少し変わっていました。こうして、たくさんの未来=パラレルワールドが生まれていきます。
——パラレルワールドについて、最新の研究状況を教えていただけますでしょうか?
二間瀬:パラレルワールドは、もともとは量子力学の解釈で出てきた考え方なんです。現在無数の世界が同時に存在していて、なおかつ、それぞれの世界に自分もいます。10個世界があるとしたら、その世界全てに自分がいるということですね。
自分が「ここにいる」と認識することで、自分にとっての世界が現れるんです。これを多世界解釈といいます。
※ライター作成
——たくさん世界があって、自分がここだ!と認識した世界が自分にとっての世界になる、と。
二間瀬:選択の連続によって、次々と生まれた世界が積み重なった先に我々は存在しています。過去に戻ったとしても、積み重なってできたこの世界の過去ではなく、別の世界=パラレルワールドに行くことになる。そういう解釈をすることにより、タイムマシンのパラドックスを解決する考え方です。
——ドラゴンボールでも、人造人間が猛威をふるっている未来と、人造人間を倒す未来では、そもそも世界が違うと。
二間瀬:そうです。過去に行けたとして、その後未来の自分が出発したところに戻るとしたら、そこは自分の出発した場所じゃなく、過去に行った自分がいる平行世界。別の歴史上のスタートラインになります。
※ライター作成
——ということは、タイムマシンに乗らなくても、普段から自分の選択によって世界は分岐していっている……?
二間瀬:そういうことですね。
——ここまで聞いて疑問が湧いてきたんですけど、フリーザ戦後、悟空はヤードラット星で瞬間移動を覚えてきました。瞬間移動とタイムマシンの仕組みは同じような気がするのですが、いかがでしょうか。
二間瀬:同じです。瞬間移動を「光速を越えた移動」ととらえたとして、ヤードラット星は重力のハードルをクリアしていたんでしょうね。
——ヤードラット星は、時間に対する文明が地球よりはるかに進化していた星ってことなんですね!
二間瀬:負の質量を上手に使っている可能性が高いです。それこそ、私たち科学者たちが求めている星になりますね。
今、「銀河系の中に約2000億の星があり、そのうちの約1000億は地球のように水や大気を持つ惑星である」と考えられています。
——そんなに……!
二間瀬:ただ、そこで生物が高等生命にまで発展するのに約30億年がかかる。たとえば地球では40億年近く経ってようやく人間が生まれました。だから星の寿命がそれ以下だと困ります。
その上でどんなに低く見積もっても、ひとつの銀河系の中に10億ほど地球型惑星があります。必然的に文明は進むでしょうから、高等文明があってもおかしくはありません。
——その高等文明の宇宙人や未来人は、我々現代人に会いにきてくれてもいいわけですよね。
二間瀬:たとえばそういう文明が1億個あったとしてもですね……銀河の中で1億個をばらまいたとすると、それぞれの間隔は100光年〜1000光年ぐらいになります。その距離を瞬間移動できるような文明は、さすがにまだないんじゃないかな。
——もしかしたら今移動中かもしれないですね、地球に向かって。
二間瀬:ただ、彼らが我々と同じ有機物になっているとは限りませんよ。情報だけで存在する生命体という可能性もあります。
——もしかしたらすでに宇宙人・未来人から何らかの信号が来ているのに、気付ける文明が我々にないだけなのかも……いろいろと妄想を巡らせてしまいますね!
タイムマシンやパラレルワールド、タイムパラドックスの話を聞いてみたら、とてつもなく壮大な話になってしまいました。
タイムマシンはまだ研究段階ですが、「できない」と証明されていないかぎりタイムマシンができる可能性があるということ。
今後の研究と、文明の進んだ星からの接触に期待しましょう!
このサイトは機械翻訳を導入しています。わかりにくい表現があるかもしれませんが、ご了承ください。
投稿する
投稿内容確認
上記の内容で投稿しますか?
返信する
返信内容確認
上記の内容で投稿しますか?
本当に削除しますか?
報告完了
投稿エラー
ユーザーをミュートします
ミュートしたユーザーのコメントは
コメント欄に表示されなくなります。
※ミュート解除はMYPAGE内のコメント管理から行えます
返信する
返信内容確認
上記の内容で投稿しますか?
修正する
投稿する
投稿する
投稿内容確認
上記の内容で投稿しますか?
修正する
投稿する