2024.12.25
K-1 WGP三階級世界王者にして、アジア最大の格闘技団体「ONE Championship」Athleteの武尊(たける)さん。壮絶な打ち合いをいとわないファイトスタイルと精神性でファンを魅了し、「THE MATCH 2022」における那須川天心戦では格闘技界の枠を超え、大きな話題を集めました。
過酷なトレーニングで身を削り、命懸けのリングに上がりつづける武尊さん。その勇姿をドラゴンボールのキャラクターたちが支えているといいます。サイヤ人を彷彿とさせる武尊さんのリアル・ドラゴンボールな生き様に迫りました。
――以前、武尊選手はInstagramに元気玉のポーズの写真を投稿していましたよね。「めちゃくちゃ似合っている」や「本当に地球を救ってくれそう」というコメントが付いていて、悟空と武尊選手を重ねているファンも多いようでした。
武尊:ドラゴンボール、ちっちゃい頃からすごく好きなんです。小学生の頃は、お小遣いをもらうたびに近所の古本屋さんでコミックスを1巻ずつ買って全巻集めました。
僕は昔からK-1ファイターになるのが夢で小学生から空手をやっていたんですけど、悟空とクリリンの修業をよく真似してました。家の裏にあった山の中をジグザグに走ったり。「いつになったら、かめはめ波を出せるんだろう……」って本気で思ってました(笑)。
――子どものころからドラゴンボールに影響を受けていたんですね。
武尊:今でも、試合前はドラゴンボールのアニメを観ています。試合前は減量をしているのでどうしても神経質になるから、できるだけ現実を忘れたいんですよ。テレビドラマだと、知っているタレントさんとか知っている景色が出てきて現実に引き戻されちゃうし、CMになるとおいしそうな食べ物の映像が流れてくるじゃないですか。だから、ナメック星編の悟空対フリーザとか、ドラゴンボールのバトルシーンを観て気持ちを高めるようにしています。
――格闘技界を代表するスターになった今でも、ドラゴンボールから力をもらっていると。
武尊:試合中もそうですよ。この間の試合(2024年9月27日「ONE Friday Fights 81」タン・ジン戦)も1Rでダウンを奪われたんですけど、そこから立ち上がって逆転KO勝ちできたのは、ピンチから蘇ってさらに強くなるサイヤ人のイメージを心の中に持てていたからじゃないかなって。
――ピンチから這い上がって勇敢に闘いつづけるのが、武尊選手の試合の魅力だと思います。そんなファイトスタイルにドラゴンボールが影響を与えているとは思いませんでした。
武尊:悟空も一度倒されてから復活して、さらに強くなるじゃないですか。ああいうシーンはすごく格闘技とつながるものを感じます。格闘家もダウンの経験がないと、どんな攻撃が効くのかなど、相手にとって嫌な攻撃は何かが分からなくなるんですよ。倒された経験を糧にして、技を磨いて強くなるっていうのは、ドラゴンボールっぽいなと思います。
――先ほど修業の話も出ましたが、武尊選手は非常に過酷なトレーニングをすることで有名ですよね。そこも悟空たちの修業と共通したものを感じます。
武尊:試合前の追い込みの期間は、食べ物とか、遊びとか、友達とか、一切排除して格闘技だけに向き合うので「精神と時の部屋みたいだな」って思うことがありますね。
――以前、YouTubeの番組で「相手選手のローキックが効かなくなるように、チームメイトに自分の足を毎日、全力で50回蹴らせていた」と話されていました。とてつもない鍛え方をするのだなと。
武尊:危険だし、めちゃくちゃ原始的な鍛え方ですよね(笑)。でも、実際に効果はあるんですよ。最初の頃は痛くて練習後に足を引きずって帰っていたんですけど、蹴られるうちにだんだんと筋肉が慣れていって、足への攻撃が効かなくなるんです。
――攻撃が効かないとは……。ほとんどサイヤ人じゃないですか。
武尊:あはは。でも、僕はいつからか自分のリミッターを解除して、持っている能力以上の攻撃ができるようになったんですよ。それは界王拳みたいで、ドラゴンボールっぽいかもしれない。
――「リミッターを解除する」って具体的にどういう状態なんでしょう。
武尊:いつも以上に攻撃がスムーズに出て、相手の攻撃もよく見えるようになるんです。自分でも分かるんです。「あ、今リミッター外れた」って。
僕はそれほど身体能力が高い選手ではなくて、ちっちゃい頃も空手の試合で負けてばかりだったんですけど、アマチュア時代くらいから自分の限界を超えた攻撃が出せるようになったんです。そしたら、自分より戦績が優れている選手にも勝てるようになって。「あれ? 勝てちゃった……」みたいな。
2016年に優勝したK-1のトーナメント(K-1 WORLD GP初代フェザー級王座決定トーナメント)でも、1回戦で脛を骨折して、2回戦でも拳を骨折して、手と足の両方の骨が折れたまま決勝戦に臨みました。本来なら闘える状態ではないんですけど、そのときもリミッターが外れていたので、どれだけ殴っても蹴っても痛くないんですよ。それでトーナメントを優勝できたんですけど、仲間たちには「武尊、どうかしてるよ……」って呆れられました。
――そのとき、髪の毛は逆立っていませんでしたか……?
武尊:逆立っていたかも(笑) 。髪の毛は金髪だし、試合のなかで無意識に超サイヤ人になろうとしているのかもしれないです。
――武尊選手はこれまで沢山のライバルたちと闘ってきましたけど、ドラゴンボールのストーリーでいうと、自身のキャリアは今どのあたりだとお考えですか。
武尊:ストーリーでいうと、やっぱり終盤戦なのかなと思います。怪我や疲労も溜まっているし、ここ数年で引退が頭をよぎることも正直ありました。
でも、最近、ドラゴンボールは新しいアニメシリーズ(「ドラゴンボールDAIMA」2024年10月放送開始)が始まったじゃないですか。魔人ブウ編でストーリーが終わったはずなのに、その後の世界が描かれてますよね。僕もあんな感じでストーリーが続けられないかなとは考えたりします。
――武尊選手のストーリーを語るうえで「THE MATCH 2022」での那須川天心戦は欠かせないと思うんです。天心戦での敗戦で、武尊選手のストーリーは最終回になってもおかしくなかったのかなと。
武尊:そうですね。天心戦の前は、負けたら引退しようと覚悟していました。
――しかし、その後、復帰して「ONE Championship」に舞台を移し、新たなストーリーを始動しました。
武尊:天心戦で負けたあとは本気で引退しようと思っていたんです。でも、試合後しばらくしたら、悔しくてたまらなくて、どうしてもリベンジしたくなったんです。
でも、天心はプロボクシングに転向したから直接リベンジはできない。じゃあ、その天心とほぼ互角で闘ったロッタン(ロッタン・ジットムアンノン。2018年に天心と対戦し、延長戦の末僅差で判定負け)に勝てばリベンジしたことになるんじゃないかと思って、練習を再開しました。
――新たなライバルが登場してストーリーが新章に突入する展開は、まさにドラゴンボールのようでした。
武尊:そんな感じしますよね。でも、新しいアニメシリーズでは、悟空たちが子どもの体に若返るじゃないですか。あんな感じで僕も若返りたいなとたまに思います。故障のない身体で、もう一度闘えたらどんなにいいだろうって。
――ところで、武尊選手が好きなドラゴンボールのキャラクターっていますか。
武尊:大人になってからなんですけど、ブロリーがカッコいいと思うようになりました。実は、ちっちゃい頃はブロリーが嫌いだったんですよ。白目で、異様な雰囲気を放っているから、劇場版(『ドラゴンボールZ 燃え尽きろ!! 熱戦・烈戦・超激戦』)で初めて観たときはトラウマ級に怖くて。
でも、大人になって観返してみると、相手を倒したいという気持ちだけを希望にして生きているって、すごくカッコいいと思いました。純粋に強さだけを追求している感じというか。僕もそれぐらいの気持ちでやれば、もっと強くなれるんじゃないかなと影響されるものがありましたね。
――戦闘シーンでいうとどうでしょう。心に残っているバトルはありますか。
武尊:一番、感情移入して観てしまうのはセルゲームですね。ドラゴンボールって、いきなり敵が現れて戦闘が始まることが多いじゃないですか。でも、セルゲームは闘いの日時が決まっていて、その日に向けて悟空たちがそれぞれ修業していきますよね。それが格闘技の試合とすごく似ているなって。
――たしかに似ていますね。
武尊:あのとき悟空が、限界まで鍛えたんだからあとは休もうって言って、セルゲームの直前に悟飯とのんびり休むじゃないですか。僕も試合前は限界まで身体を追い込むんですけど、最後の1週間くらいは疲労を抜くために休まなきゃいけないんですよ。でも、その期間ってすごく不安で。「もっと練習しなきゃ」とか「試合前なのに休んでていいのか」とか、考え込んじゃうんですよね。そのときに悟空が「心配すんなって」とか「これいじょう修業したって意味ねえって。限界までやったんだ」って言ってくれると、心が軽くなるんですよ。
――悟空が言ってくれると説得力がありますよね。
武尊:本当にそうで。セルゲームでは悟飯が圧倒的な強さを見せて勝ちますよね。あのシーンを観ていると、悟飯みたいに勝つイメージが浮かんできて、休息の期間もポジティブでいられるんです。
――最後にお伺いしたいんですが、武尊選手は神龍に願い一つを叶えてもらえるなら、何をお願いしますか。
武尊:究極の質問ですね。難しいですけど……ドラゴンボールDAIMAの悟空みたいに、子どもに若返らせてほしいですね。それで、もう一度、若い体で闘いを楽しみたい。
僕、格闘技が大好きで、今でも限界ギリギリまで身体をいじめ抜いて闘いたい気持ちはあるんですよ。でも、怪我もあるし、やりたい練習ができないとか、身体をケアしながらトレーニングしなきゃいけないとか制約も増えてきて。昔みたいに何も考えずにめちゃくちゃにトレーニングをして、試合に出てっていうのは難しくなってきました。だから、悟空みたいに若返って、もっともっとトレーニングをして、今よりも圧倒的に強い武尊になりたいですね。
――その武尊選手はどこまで強くなってしまうんでしょうか。
武尊:あはは。でも、本当に「一からカリン塔に登り直したいな」って最近よく思うんです。
――2025年に、先ほど話題に出たロッタン戦が行われることが先日発表されました。最後に、その試合に向けて意気込みを教えてください。
武尊:毎回、最後のつもりで試合に臨んでいるんですけど、次戦も同じように、最後のつもりで今持っているエネルギーを出し切って勝ちたいと思っています。勝たないといけない試合だと思っているんで、全てを懸けて闘って、必ず勝ちます。
――武尊選手のリアル・ドラゴンボールな生き様が感じられたような気がします。武尊選手、ありがとうございました。
武尊さん:1991年生。鳥取県米子市出身。幼少期にK-1ファイターに憧れて空手を始め、2011年にキックボクサーとしてプロデビュー。2013年のKrush -58kg級王者を皮切りに、K-1 WGP三階級世界王者など獲得タイトル多数。現在はONE Championship Athlete 。168cm61kg。teamVASILEUS所属。戦績45戦42勝3敗(26KO)
取材・文:島袋龍太
写真:宮本七生
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