2023.09.14
悟空とブルマのドラゴンボールを探す旅路を大きくサポートしたアイテム「ホイポイカプセル」。小さく軽いカプセルを投げると、バイクや飛行機、家具家電付きの家が瞬時に出現するという魔訶不思議な優れものです。
「物体を粒子状に変換する」仕組みで出来ているというホイポイカプセル。この先、科学が進歩すればホイポイカプセルが現実になる日は来るのでしょうか?
ホイポイカプセルのような未来の乗り物「poimo(ポイモ)」を研究・開発する、メルカリの研究開発組織「mercari R4D」の山村亮介さんと、東京大学教授の川原圭博先生にお話を伺いました。
語り手:山村亮介さん
株式会社メルカリ mercari R4D リサーチャー。東京大学インクルーシブ工学連携研究機構価値交換工学共同研究員。
2008年株式会社デンソーに入社しディーゼルコモンレールシステム向けインジェクタの研究・開発・設計、新規事業プロジェクト立ち上げなどを担当、2018年3月に株式会社メルカリに入社し、2019年より現職でpoimoの研究、社会実装を担当。
語り手:川原圭博先生
東京大学 大学院工学系研究科 教授
コンピュータネットワーク、モバイル、ユビキタスコンピューティングのコアとなる技術の研究開発を通じて、「未来の生活」をデザインすることをライフワークにしている。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き!@_maishilo_
——まずは、風船のように膨らまして使うやわらかな電動モビリティ「poimo」についてお聞きしていきます。poimoとはどういう乗り物なのでしょうか?
左はゆったり座れるソファ型のpoimo、右はバイク型のpoimo
山村:poimoは軽くて、やわらかい素材でつくられた安全な電動モビリティです。
バイク型のボディは10分の1ぐらいのサイズに折りたためるので、 リュックにも入れられるんです。使いたいときは空気を入れて膨らませば、すぐに走行できます。ソファ型は1回の充電で4時間ぐらい乗れますね。
——まさにホイポイカプセルのような便利なアイテムですね! 開発までの経緯を教えてください。
山村:2018年頃、メルカリグループにあったメルチャリというサービス向けに「新しい乗り物を開発しよう」という話があったんです。ちょうどそのときに共同研究していた川原先生が主催する研究合宿があり、“やわらかくて折りたためる乗り物”というアイデアが出ました。
——「poimo」という名前は、ホイポイカプセルに通じるものがあるように思いますが……?
山村:それは本当にたまたまなんです!(笑)。 poimoは「POrtable and Inflatable MObility」の略です。
“やわらかくて折りたためる乗り物”が公募に採択されて、3日で名前を決める必要がありました。そこでアイデアをいろいろ出した中から、やわらかい乗り物なので、丸っこい文字をいっぱい使いたいなということで、この名前になりました。
とはいえ開発の早い段階で「ホイポイカプセルに似てない?」という話題があがったんです。それから「ホイポイカプセルみたいに持ち運べたらいいね」「ホイって投げたら物が出てくるみたいに、すぐ使えたらいいね」とアイデアが広がっていきました。
——ホイポイカプセルは投げると一瞬で家や飛行機が出てきますが、poimoは膨らむのにどれくらい時間がかかるのでしょうか?
山村:ホイポイカプセルほど早くはないのですが、1つのパーツにつき1分半です。椅子サイズのもので5パーツなので、全部で10分弱ですね。
これで膨らませるのに10分弱ほど。
山村:ホイポイカプセルほどすばやく大きくできるとすごく便利な一方で、お子様や高齢者の方がケガをしてしまう可能性があると思うんです。安全性を考えて、一瞬で大きくすることは考えていないですね。
ホイポイカプセルの周辺から離れるよう悟空に注意するブルマ
——安全というと、poimoはやわらかいので、人の近くを走ってもそこまで危なくなさそうですよね。
山村:そうですね。自動車の硬いボディと違って、poimoはやわらかい素材なので、人に当たっても比較的安全です。もちろんぶつかってほしくはないんですけど……。
poimoのような乗り物が実用化すれば、 自動車業界がずっと抱えてる交通事故の問題を新しいアプローチから解決できたり、人とモビリティが楽しく共存できる社会になったりすると思うんです。
——いろんな可能性のある未来の乗り物なんですね!
——続いてはドラゴンボールに登場するホイポイカプセルについてお聞きしていきます。お2人から見て、ずばり、ホイポイカプセルは実現可能なのでしょうか?
山村:実現できるところと、難しいところがあると思っています。サイズを小さくするのはできるんですが、重いものを軽くすることは難しいですね。
——作中では、「物を粒子状に変化させてカプセルに入れる」と説明されています。
山村:物体を粒子状にするにはやり方がいくつかあって、一番(作中のイメージに)近いのは原子レベルで粒子を作り変える方法だと思います。
川原:ただ、この方法が原子(物質を構成する基本的な粒子)そのものを作り変えるようなものとなると、核融合、核分裂が必要なレベルの話になります。これでなんでも作るというのは現代の技術ではまだやり方が見えないですね。
山村:もう少しやりやすいものだと、「物体をミキサーなどで粉々にしてから、物体に戻す」という方法がありますよね。
川原:これについては「セルフアセンブリー」や「セルフフォールディング」という研究が進んでいます。3Dプリンターで線や粒子の基本形状を印刷し、印刷した物質に熱をかけるとひとりでに変形したり、くっついたりして別の形になるというものです。4Dプリントとも呼ばれていますね。
東京大学での研究だと、折り紙のように折り目のついた薄くて平らなものを、温めて立体にするものがあります。
3Dプリンターって、印刷にすごく時間がかかるんですよ。でも平らなものならすぐに印刷できるので、ぺらぺらの物質を刷ってあとから立体にすれば、材料も時間も節約できるんです。
セルフフォールディングの例(Inkjet 4D)。折り目のついた平らな板に熱を与えると……
板が変形して、帽子(写真左)になる。
——ホイポイカプセルそのものではなくても、似ている研究は既にいろんなところで始まっているんですね!
山村:既に実用化されている方法としては、空気を使うものがありますね。バルーンのような入れ物を準備して、そこに空気を入れていくという方法です。
子ども用のボールプールやトランポリンに近いもので、実際の建築でも使われている例があります。
川原:空気を使った技術でいくと、熱をかけると体積が膨らむ発泡剤を使った物体を作っておいて、大きくしたいときには、熱を与えて発泡スチロールのように気泡を発生させて、膨らませるという方法もあります。
ホイポイカプセルのようにボタンひとつでしまうことはできませんが、圧力をかけて元に戻す方法も今後は出てくるかもしれません。
——こうした技術がどんどん発展したら、現実世界でホイポイカプセルを見れる日がいつか来るかもしれないですね!
——作中のホイポイカプセルは少し高価ですが、現実のpoimoの方のお値段はいかがでしょうか?
山村:未定ですが、電動車椅子ぐらいの値段にしたいと思っています。開発コスト的に難しい部分もあるんですけど、一般の方が買える価格を目指す予定です。
——poimoは電気で走る乗り物ですが、充電はどうやって行うのでしょうか?
川原:現在は、コンセントに繋いで充電しています。理想は、スマホの「ワイヤレス充電(置くだけ充電)」と同じ技術を使って、置くだけで充電できるパネルをいろんな街の道端に置けるといいなと思っています。
例えばカフェの前に充電パネルを設置して、お茶している間に充電が完了できたらすごくいいですよね。
日本各地の店先や歩道に充電できるパネルを設置する(画像は東京大学提供)
——聞いているだけでワクワクしてきますね! 実際に買えるようになるのはいつ頃なのでしょうか?
山村:2026年までに実現したいですね。
川原:正直、技術的には既に可能なんですが、法律の問題が難しいんです。日本の道路の狭さだと、走りにくいという課題もあります。
山村:あとは、金属の乗り物は「1年以内に何%の確率でここが故障する」といった故障の予測がしやすいんですね。でも、poimoの素材はどう壊れるか予測がかなりしにくいんです。
なので、まずはパートナーさんを募集して試運転をし、そこから改良していくのがいいかなと考えています。
――もしpoimoが気軽に乗れるようになったら、どういう方々に乗ってほしいですか?
山村:試乗イベントでよく「使いたい」と言われるのは高齢者の方ですね。車の免許を返納した後、乗り物がないという問題があるので、poimoでそれを解決できたら最高ですね。
あとは、車椅子の方にも人気があります。 poimoは自由にデザインができるので、その人の体に合わせた形にできるんです。ずっと乗っていても体が痛くならないので、普段から車椅子を使う方にはぜひ使っていただきたいですね。
川原:これまでたくさん研究をしてきたんですけど、poimoはどこに持っていってもすごく喜ばれるんですよ。
「この不思議な乗り物はなんだろう」と思ってた人も、 実際に乗るとすごく笑顔になります。こんな研究は他にないですよ。一度は皆さんに乗ってほしいなと思っています。
フランスのVivaTech2022の様子(画像はmercari R4D提供)
——素敵なお話ですね! 最後に、もしホイポイカプセルが実現したらどんなものを入れたいか、お2人の夢を教えてください。
山村:僕は家のホイポイカプセルが欲しいですね! 面倒な引越しが簡単にできるようになりそうです。
川原:僕はアウトドアテントのホイポイカプセルが欲しいです。素早く建てられそうでいいですよね。
山村:研究を考えるときって、ドラゴンボールのような作品に出てくる技術を参考にすることもあるんですよ。「あの頃ドラゴンボールで憧れてた技術って、今ならできるのかな?」と思ってやってみたりする。
ドラゴンボールを読んで研究者になって、それを実現しようとしている人はたくさんいると思いますよ。
——本日はありがとうございました!
写真:宮本七生
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