2023.07.13
ブルマたちが、ドラゴンボールを集めるべく着陸したナメック星。そこは地球では見慣れない高木が生え、ところどころが水に浸っている閑散とした星でした。
作中でも印象的な舞台として名前が挙げられることの多いナメック星ですが、実際はどういう星なのでしょうか?
今回は、東京工業大学教授でドラゴンボールに精通している関根康人先生に、このナメック星を惑星科学の観点から考察してもらいます。
語り手:関根 康人先生
1978年東京都生まれ。東京工業大学地球生命研究所所長。研究分野は惑星科学。地球や他の惑星の起源の研究を通じて、生命の起源を探究している。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き!
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——まず、ナメック星はどういう種類の星なのでしょうか?
関根:星には、太陽のように自分で光る「恒星」、恒星の周りを回る地球のような「惑星」、さらに月のように惑星の周りを回る「衛星」があります。
ナメック星は、この中で地球と同じ「惑星」にあたりますね。
——ナメック星には太陽が3つありますが、これは実際ありえるのでしょうか?
関根:ありますよ。太陽をいくつか持つ惑星系はけっこう見つかっていて、珍しいことではないんです。
——現実にナメック星のような星があるんですね! ナメック星には夜がありませんが、これは現実でもそうなのでしょうか?
関根:それが物理的にはとても難しいんですよ。太陽がいくつかある場合、まず一番大きい太陽の周りを、残りの太陽が回るんですね。
さらにその周りを惑星たちが回るので、太陽が何個あっても、夜は同じようにあるんです。
▲ナメック星の周りを3つの太陽が回っている。
▲「大きい太陽」の周りを「中くらいの太陽」が回り、「中くらいの太陽」の周りを「小さな太陽」が回る。そして、「3つの太陽」の周りを惑星が回る。
——つまりナメック星は、かなり特殊な環境の星なんですね……! 地上の様子を見ると、環境は地球とかなり似ているように見えます。
関根:すごく似ていると思いますよ。悟飯やクリリンたちが普通に歩いているので、ナメック星って地球と重力がほとんど同じはずなんです。
重力が同じということは、惑星の大きさがほとんど同じということです。
太陽以外の星の周りを回っている惑星を「系外惑星」と呼びますが、これまで見つかった系外惑星は、地球より大きく、数倍くらいの重さで重力の強い星のほうが多いんですよ。そういった地球の数倍の質量の惑星を「スーパーアース」と呼びます。アースは地球という意味です。超サイヤ人みたいですね。
地球ぐらいの小さな惑星はどちらかといえばマイナーなので、ナメック星は本当に「地球の兄弟」と言ってもいいぐらい似ている星だと思います。
——逆に、地球と異なるところはありますか?
関根:まず、太陽が3つあってずっと照らされているので、四季の変化は地球より少ないと思います。
あとナメック星は、地球より水が少なそうですね。地球のように深い海があまりなくて、浅い湖が多いように見えます。
そのような惑星の地表環境を考えると、おそらく、土星の周りを回っている「タイタン」という衛星が参考になると思います。
タイタンの地表には液体のメタンがありますが、その液体の量は地球の海よりずっと少ないんです。赤道あたりは砂漠ばかりで、北極や南極に近づくほど湿潤になり湖が増えます。ナメック星もタイタンに近い地表環境になるんじゃないでしょうか。
——わずかな描写から星全体のことまで読み取れるんですね! 非常におもしろいお話です!
——ナメック星は空が緑色ですが、これは実際ありえるのでしょうか?
関根:僕もいろいろ考えたんですけど(笑)とても難しい。ただ、仮説が1つあります。
まず地球の空が青いのは光の波長と大気が関係しているんです。
そもそも光には波の性質があって、その波の長さを波長といいます。青い光は波長が短く、赤い波は波長が長い。太陽から届く光のうち、波長の短い青い光は大気の分子で散乱されやすいんです。空で散乱された青い光が僕らの目に届くので、空は青く見えるんですよ。
一方、夕焼けは赤いですよね。
太陽が地平線へ遠ざかると、僕らの目に届くまでに光は、長い経路、大気の中を通過しないといけません。その結果、波長の短い青い光が散乱しきって、散乱されにくい最も波長の長い赤い光が残るので、夕焼けは赤いんです。
でも、ナメック星の「緑」は、波長の長さが青と赤の真ん中なので、強調されにくい色なんですね。自然に緑の空ができるというのは考えにくいんです。
——では、どうしてナメック星の空は緑色に見えるんでしょう?
関根:おそらく、 雲の粒子の中に緑色の微生物がいるんだと思います。
——ナメック星には地球にいない謎の生き物がいて、その生き物のせいで空が緑色になっているということですね。
関根:その可能性が一番高いと思います。空は地上より太陽の光を浴びやすいので、光合成する生物にとっては都合がいい環境のはずなんです。
ナメック星の空が緑色なのは、気候や大気のせいではなくて、 我々には馴染みのない微生物が雲粒の中に住んでいると考える以外にないでしょう。
——大変おもしろい考察です。ナメック星の生き物といえば水中の生き物の印象が強いですが、水中の生き物が多いという環境は現実でもありえるのでしょうか?
関根:地球も元々は海で生命が生まれ、進化したので、ありえる話だと思います。今から5〜6億年前の地球では陸上に生命はなく、海のみが生命生存の場でした。
水中って、宇宙からの紫外線や気候の変化の影響が少ないので、生存するにはすごくいい場所なんですよ。
もしかすると、ナメック星の生き物は、何億年か前の地球の状態に近く、 これからどんどん地球のように生命が陸上に進出するのかもしれません。
——何万年か後のナメック星の様子もぜひ見てみたいですね!
——ナメック星に到着した悟飯やクリリンは、ブルマの話も聞かずにすぐに外へ飛び出してしまいます。
関根:これ、実は危険なんですよね。
太陽系の場合、現実には、 別の惑星に着陸するまで、何十年もかけて事前の調査をするんですよ。
——何十年もかかるんですね!
関根:「フライバイ」というんですけど、まず星の近くに探査機を飛ばして、通り過ぎながら写真を撮って地上の様子を見るんです。
次に、ロケットエンジンを逆噴射して惑星の周りを回る軌道に入る「周回探査」という調査を行います。このとき、その星の大気や地形も詳しく調べます。
それからやっと着陸ですが、これもすぐに宇宙飛行士が着陸するわけではなくて、まずは無人着陸機を降ろします。
どんな環境なのかわからず、ひょっとしたらウイルスのような未知の生命がいるかもしれませんし、逆に、探査機に付着した地球のウイルスや微生物を持ち込んでしまうこともありえるので、人間による探査までとても慎重に調査するんです。
——ナメック星に最低でも2回はロケットを飛ばして着陸後にも調査してからじゃないと、クリリンと悟飯は外に出てはいけなかったんですね……。
関根:だから、ブルマがやっていることはすごく正しいと思います(笑)。実際の有人探査でも、着陸地点の環境を調べてから外に出ることになるので、ブルマの調査のシーンはすごくリアリティがありますね。
ただブルマも、大気成分は着陸する前の「周回探査」で調べるとなお、よかったです(笑)。
——全員ちょっと気が早いんですね。ナメック星で悟飯たちは普通に生活できていますが、私たちのような一般人もナメック星で生きていけると思いますか?
関根:水があって重力も同じぐらいなので、旅行ぐらいなら私たちでも大丈夫だと思います。
ただ、住むとなるとわかりません。食べ物を確保するために農業をしないといけないんですが、ナメック星は水が少ないので大きな規模の農業ができるかどうかは少し心配ですね。
あとは、農業にはバクテリアなど微生物の力が必要不可欠なんですね。地球の微生物を持ち込むのか、そういう微生物がナメック星にもいるかは住む前に調べてみた方がいいでしょうね。
——ここまでナメック星についてお聞きしてきましたが、最後に現実世界の宇宙計画がいまどうなっているかも伺いたいです。
関根:ナメック星のような、地球以外の星に移住する計画は現実世界でも着実に進んでいます。
有名なのは日本も参加している米航空宇宙局(NASA)が主導する「アルテミス計画」ですね。これは、月にどれくらい水分があるかを調べ、最終的に人間が住めるような居住区を作ろうという計画です。
月の次は火星が有人探査、移住の候補です。火星は地下に氷がふんだんにあるので、月より多くの人が住めるでしょうね。一方で、距離が遠いのが難点です。
いずれにせよ、このまま順調に進めば2050年ぐらいには、月や火星に人が住んでいる世界を見られるかもしれないです。
——思っているよりも近いうちに、他の星に住めるようになるかもしれないんですね。本日はありがとうございました!
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