2023.06.22
突然ですが、亀仙人ってオシャレじゃないですか……?
「ないない! アロハシャツにサングラスでしょ?」と思った方、ちょっと待ってください。
確かに、象徴的なアイテムは思い浮かぶけれど、服に気を使っているキャラクターというイメージは少ないでしょう。ブルマのようなオシャレさで鳴らすキャラクターに比べると、コーディネートのパターンも固定されている。
でも、だからこそ、亀仙人のファッションって、見れば見るほど洗練されています。自分のスタイルは決して崩さないまま、細部をアレンジしてバリエーションを出す。そんなこだわりと遊びの両立を随所に感じることができます。
……あ、ご挨拶が遅れました。ライターの平格彦(たいら・まさひこ)と申します。普段は男性向けのファッションメディアで執筆しています。久しぶりにドラゴンボールの原作を読み返したら、上記のことに気付きました。
そんな気付きをもとに今回は、ドラゴンボール世代ど真ん中のファッションアナリスト・山田耕史さんと、亀仙人のファッション=亀仙流ファッションの秘密を多角的に深堀り。ファッションにおける「亀仙人らしさ」の言語化にチャレンジしました。
最後には、山田さんの力を借りて、亀仙流ファッションを令和風に再現。マネしやすい、リアルなコーディネートとしてご紹介します。
亀仙人はオシャレじゃない、と思っているそこのあなた。記事を最後まで読めば、きっと「亀仙人はオシャレだ」と考えを改めることでしょう。
※取材は新型コロナウイルス感染症対策を講じた上で実施しました
山田耕史さん:大学卒業後、エスモードジャポン大阪校に入学し、エスモードパリに留学。帰国後にファッション企画会社、ファッション系ITベンチャーを経て、フリーランスとして活躍。現在は、ワークマン公式アンバサダーとして新製品の共同開発も行う。著書に『結局、男の服は普通がいい 世界一かんたん、一生使えるオシャレの方程式』(KADOKAWA)。
blog:https://www.yamadakoji.com
Twitter:https://twitter.com/yamada0221
亀仙人といえば、やはり「派手な服」のイメージがあります。山田さんから見て、亀仙人のファッションは「奇抜」と言えるのでしょうか?
アイテムの色合いや柄を抜きにして考えると、ぶっちゃけ「普通」だと思います。
この服装はそうでもありませんが、亀仙人といえば、派手な柄のアロハシャツに黒めのサングラス。どう見ても「奇抜」な気がするのですが……。
トレードマークの開襟シャツだけでなく、Tシャツ、ショートパンツ、ビーチサンダルやスニーカーなどお馴染みのアイテムは、実はトレンドに影響されづらい「普通服」なんです。今も古臭く感じない、という意味で「普通」と表現しました。
なるほど。派手に見えるけれど、アイテム自体はどれも定番だと。派手なのにバランスが取れて見えるのはそういう理由があったんですね。確かに、スニーカーもコンバース風の王道的なデザインのものが目立ちます。
そうですね。僕も本の中で「普通靴の王様」としてコンバースのオールスターを紹介していますが、亀仙人のコーディネートには、そうした王道のアイテムを使いながらオシャレに見える要素が詰まっているように感じます。誰でも真似しやすいですし、僕自身もこういうコーディネートの方向性は好きですね。
……でもちょっと待ってください。そうはいっても、亀仙人のファッションはアイテムの柄や色合いも非常に派手ですし、「普通」からはやや外れているようにも見えます。なぜ定番のアイテムを使った普通のコーディネートに、私たちは「亀仙人らしさ」を感じてしまうのでしょうか?
第一に、亀仙人の「陽気なキャラクター」がにじみ出ているからですね。服を着こなすには、まずその人のキャラクターとマッチしたアイテムを選ぶことが大切です。派手な色を組み合わせてもコーディネートが成立するのは、亀仙人のキャラクターがあってこそです。
キャラクターとコーディネートを合わせることが大切ならば、亀仙人のファッションは陽気な人に似合うということなのでしょうか?
必ずしもそういうわけではありません。もちろん明るいキャラクターの人であれば「こなれ感」は出せると思いますが、決して陽気じゃない僕も着ているので大丈夫でしょう(笑)。
取材当日「亀仙人っぽい」色のシャツをセレクトして着てくださった山田さん
確かに、明るい色ながら全く不自然には見えません。なぜ着こなせているのだと思いますか?
色や柄を「亀仙人から引き算」することでアレンジしているからでしょうか。自分の好みに合わせて色数を減らしたり、柄物のシャツを無地にしたり。
「引き算」とは違う視点ですが、 亀仙人のファッションにもこういうアレンジの要素があって、それがオシャレ感の演出につながっているように見えます。
なるほど、アレンジ。それはどういう部分に感じますか?
例えば、亀仙人のはいているソックス。絶妙にたるんでいますよね。短パンにソックスを合わせているのに子どもっぽく見えないのは、ソックスをたるませているからなんです。
「ソックスたるませ」でこなれ感を演出
確かに。一見同じだけど微妙に違う、という意味では、カメハウスのクローゼットにいつも背負っている甲羅のカラーバリエーションがズラッと並んでいるシーンを思い出しました。
実際、コーディネートに合わせて甲羅の色が変わっています。
カラバリも豊富。アニメ版には紫色の甲羅も登場
定番小物を微妙に変えるのは亀仙人のファッションの特徴ですよね。実は、物語が進むにつれてサングラスの形も変化しているんです。丸っぽいボストン型のイメージが強いですが、少しシャープなスクエア型の時期も。コーディネートのパターンは少ないながら、小物でトレンドを取り入れていたのかもしれません。
巻数を重ねるごとに少しずつ変わっていく、亀仙人のサングラス
これには気付かなかった。ファッションを分解することで、亀仙人の性格に対する解像度も上がってきますね。こだわりと柔軟さをうまくバランスさせた人物、という。
その意味でも、冒頭で申し上げたようなキャラクターがにじみ出たファッションということなんです。まぁ、「亀仙人はオシャレなんだ」という鳥山先生の隠れたメッセージかもしれませんが(笑)。
ここからは亀仙人のコーディネートを、よりファッションジャンル的な側面から分析してみたいと思います。やはり「アメカジ(編注:アメリカ風のラフな服装。和製英語)」になるのでしょうか?
そうですね。アメカジのなかでも、バカンスなどで着るような「リゾート」のスタイルに近いと思います。南海の孤島に住んでいる亀仙人らしいですよね。
リゾートスタイルを代表するアイテムといえば、やはりアロハシャツ。そもそもアロハシャツというのは、いつ頃から日本で広まったのでしょうか?
きっかけは、1950年代に登場した「太陽族」でしょうか。芥川賞を取って映画化もされた石原慎太郎さんの小説『太陽の季節』から生まれた言葉で、夏の海辺などで自由奔放に振る舞う石原裕次郎さんのようなイメージの若者です。
「仙人とは思えないほどスケベ」という亀仙人の「ちょいワル」イメージにも近いですね。
そうですね。太陽族は「お金を持ったイケてる不良」なので、アロハシャツに「ちょいワル」のイメージがあるのもうなずけます。
なるほど。 アロハシャツを好む年輩の方が多いのは、太陽族のイメージがあるからなのだろうか……。
1950年代から60年代に育った世代は、ヴィンテージジーンズと同じような「憧れのアメリカ」を象徴するアイテムとして、アロハシャツを捉える傾向があります。鳥山先生はどうだったか分かりませんが、先生も世代としては同じくらいですよね。「ちょいワル」の言葉を世に広めた雑誌『LEON』に通じる不良的なイメージだけでなく、ヴィンテージ品を紹介する雑誌『Lightning』のような世界観でアロハを着ている人も多いでしょうね。
確かに、亀仙人はどちらの雑誌に登場してもおかしくなさそう。
あと、アロハシャツといえばハワイのイメージです。1961年公開の『ブルー・ハワイ』という映画の中で、主演のエルヴィス・プレスリーが着ていたアロハシャツが亀仙人っぽいんです。
映画と同名の曲は世界的にヒットとなった(ソニーミュージックグループの公式サイトより)
なるほど! プレスリーから広まったハワイアンなリゾートスタイルにも影響を受けているのかも。亀仙人の必殺技「かめはめ波」もハワイの「カメハメハ大王」を連想させます。ドラゴンボールが連載されていた1980年代に、こうしたハワイアンなスタイルがはやっていたということはあるのでしょうか?
PERSON'SなどのDCブランド(編注:1980年代に流行した、個性的なデザインを特徴とする日本の高級ファッションブランド)が提案している、アロハシャツにショートパンツとハイカットスニーカーを合わせるコーディネートが亀仙人の着こなしそのままです。やはり多少の影響は受けていたと考えていいでしょうね。
当時流行っていた亀仙人っぽい着こなし(『ホットドッグ・プレス 1986年5月10日号』より)
亀仙人のファッションと80’sファッションのつながりを示すような要素は他にあるでしょうか?
服の色や柄ですね。オレンジや紫といった原色使いは、まさに80年代。亀仙人のサングラスも、赤いフレームの原色使いです。
あと、アロハシャツの柄にも注目してみてください。ハイビスカスやヤシの木といった王道柄に加えて、80年代はロゴを使った柄が流行ります。亀仙人もアルファベットや記号柄のアロハシャツをよく着ています。
実際、アメリカの百貨店・シアーズの当時のカタログには亀仙人タイプのシャツが紹介されていました。
確かに80年代感がありますよね。あとは、Tシャツの裾をパンツに入れ込むタックインスタイルも。
1970年代後半から80年代にかけてはやりましたね。タックインというと、一時期は「ダサい着こなし」の代名詞でしたが、今は若い人を中心にオシャレなスタイルとして定着しています。だから、原宿や下北沢には今亀仙人と同じような格好の人がたくさんいますよ(笑)。
最後に、亀仙人を象徴するもう一つのアイテムである、チャイナ服にも触れておきましょう。これも80年代を感じさせますか?
1985年、86年頃の『Fine』や『ホットドッグプレス』などの雑誌に、チャイナ服やマオカラー(立襟)のトップスを使ったコーディネートが紹介されています。当時はやっていたんでしょうね。チャイナ服は一部で人気が再燃していて、チャイナシャツを発売するブランドもあります。
余談ですが、僕が一番好きな亀仙人のコーディネートもチャイナ服ベースのものなんです。ジャッキー・チュンとして天下一武道会に出場した時の勝負服。モノトーンで、普段のコーディネートとのギャップを感じさせるところがいいですよね。スリッポン(編注:靴ひもや金具がついていない靴のジャンル)とか履いてたら今っぽい。
亀仙流ファッションについて掘り下げたところで、今度はその特徴を押さえた、マネしやすいリアルなコーディネートを山田さんに考えてもらいました。
コーディネートを着用してくれたのは、「ドラゴンボールの原作が実家に全巻あって愛読していた」というモデルの松島佑樹さん。今後トレンドの中心になるかもしれない2023年バージョンの亀仙人ファッションをとくとご覧あれ!
アロハシャツ:QUIKSILVER(クイックシルバー)/ ボトムス:H&M / サンダル:Havaianas(ハワイアナス)/サングラス:UNIQLO(ユニクロ)
亀仙人と聞いて、多くの人が思い浮かべる色がオレンジではないでしょうか。オレンジ色をベースにした、トロピカル柄のアロハシャツは、誰でも陽気な亀仙人気分になれるアイテムです。
アロハシャツのデザインが派手なので、ボトムスはシンプルかつベーシックなショートパンツをセレクトしました。リネン素材は吸汗速乾性や防臭性に優れた、夏にぴったりのアイテム。南国の島に住む亀仙人も愛用しているかもしれません。
そして、南国には欠かせないアイテムである、ビーチサンダル。定番ブランドのゴム製アイテムは、アロハシャツとの相性抜群です。
着てみると、すごく楽ですね。開放的な気分になるのでひょうきんなポーズも取りやすいです。足元がビーサンなので、サングラスがあった方が全体のコーデが締まるかも……。普段、仕事で黒い服を着ることが多いので新鮮でした。
チャイナシャツ:AZUL BY MOUSSY(アズールバイマウジー)/ ボトムス:ZARA(ザラ) / サンダル:ZARA(ザラ)/サングラス:UNIQLO(ユニクロ)
武道の達人、武天老師の戦闘服とも言えるチャイナシャツ。本来は刺繍などの装飾が施されていることが多いアイテムですが、それを全て削ぎ落とし、真っ黒にすると、途端にモードな雰囲気に。亀仙人も、ギャルとデートするときはこんな服を着てるかも……。
そして、光沢感のある生地に目立たないようプリントされた、同系色の総柄が大人な雰囲気のパンツ。トレンドのワイドフィットシルエットは、突如何者かに襲われたときも、亀仙人の体術の動きを邪魔しないでしょう。
でも、あまりキメキメ過ぎるのは亀仙人っぽくありません。足元はサンダルでリラックス感をプラス。ソリッドなレザー素材なので、モードな雰囲気を壊しません。
チャイナシャツは今まさにトレンドですし、日常的に着れそう。あと、アロハコーデにも増して身軽! さすが、体を動かすときに着るアイテムなだけありますね。トレーニングにもピッタリです。
今回ご紹介したコーデは、どれもマネしやすいものばかり。亀仙人のように毎日を楽しく、Sparking!するためにも、ぜひ参考にしてください。
そして、80’sファッションにスポットライトが当たる中、亀仙流ファッションは今後さらにトレンドの中心になることが予想されます。流行に乗り遅れないよう、すぐにでも挑戦してみるのがおすすめ。
「よく動き、よく学び、よく遊び、よく食べてよく休む」夏に向けて、亀仙流ファッションを極めておくのじゃ!
取材・文:平 格彦
(顧問)編集者、ライター。AllAbout「メンズファッション」ガイド、[着こなし工学]提唱者。MENSA会員。野菜ソムリエ。出版社を経て独立後、ジャンル、フィールド、メディアを問わず幅広く活動。最近は顧問編集者として、オウンドメディアに関するアドバイスや、企業や経営者の情報整理なども。
note:https://note.com/masahikotaira
Twitter:https://twitter.com/masahikotaira
Instagram:https://www.instagram.com/masahikotaira
撮影:関口佳代
スタイリング:田村理絵
ヘアメイク:大久保沙菜
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