2023.05.11
ドラゴンボールを語る上で欠かせない乗り物のひとつ、筋斗雲。心が清らかな者だけが乗れるこの雲は、孫悟空や孫悟飯の乗り物として、作中の様々なシーンに登場します。悟空が巨大な筋斗雲から一人分をちぎって受け取るシーンや、天下一武道会優勝後にチチと飛び乗るシーンにワクワクした方も多いのではないでしょうか?
筋斗雲とは、理論的には一体どんな雲なのでしょうか? 気象学などを専門とする、九州大学理学研究院の川村隆一先生にさまざまな質問をぶつけてみました!
語り手:川村 隆一先生
九州大学理学研究院教授(地球惑星科学部門)。国際宇宙惑星環境研究センター所属。気象学・気候力学・自然災害科学にかかる諸課題について研究を進めている。教育に関しては、学部生・大学院生対象の講義を行うと共に、卒論・修論・博論等の研究指導を行う。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き! @_maishilo_
ーーまず、雲は何でできているのでしょうか?
川村:水蒸気ですね。もう少し詳しくいうと、「エアロゾル」と呼ばれる大気中の微粒子に水分子がくっつき、それが集まって雲になります。
あまりに空気がきれいだとエアロゾルが少ないので、雲はできにくくなります。なので、少し空気が汚いぐらいの方が雲は生まれやすいんですよ。
ーーおもしろいですね。雲にはいろんな見た目のものがありますが、実際はどれくらい種類があるのでしょうか?
川村:普段みなさんが見ている雲は、巻雲・層雲などおよそ10種類に分けられます。
おおまかには地上から2kmと6kmのところにそれぞれ目安があって、地上から2kmまでの下層雲の雲は「水滴」、6kmより高い上層雲の雲は「氷」でほとんどが構成され、間の中層雲の雲ではその2つが共存しています。
ーー筋斗雲を分類するとしたら、どの雲になると思いますか?
川村:筋斗雲は見た目がもくもくしていますよね。このように凹凸がハッキリした形は、水滴でできた「積雲」や「積乱雲」に多く見られます。
もくもくしている雲は、上昇気流によって雲粒が上昇するときに、周りから乾燥した空気をどんどん取り込んで発達している状態なんです。乾燥した空気を取り込んだところは雲粒がどんどん蒸発して消えていくので、そこだけ凹んでもくもくした見た目になるんですよ。
一方で、ほとんど氷の粒でできている巻雲や巻層雲は、すぐには蒸発しません。ですからもくもくしていませんよね。
もくもくしているということは水滴でできている証拠であり、せいぜい高度6kmくらいまでの高さであることがわかります。 筋斗雲はもくもくしているので水滴でできた雲であることがわかり、ふつうは高度6kmくらいまでしか存在できないと言えます。
ーーあまり高い所までは上がれないんですね。積乱雲と聞くと雷を落とすイメージがありますが、筋斗雲も天気を変える可能性があるのでしょうか?
川村:うーん、悟空や悟飯が乗っている筋斗雲はサイズが小さいので、難しそうですね。落雷に必要な電気は雲の中の氷晶とあられが衝突することによって発生するんですが、ある程度大きい雲でないと多数の衝突が起こらないので、雷が落とせないんです。
逆に、筋斗雲くらいのサイズの雲が雷を落とせるぐらいの氷晶とあられを持っているとしたら、光を通さないくらい高密度に圧縮されたような状態だと思います。いずれにしても、自然界にはないですね。
ーー悟空の筋斗雲は雲としてはかなり小さく見えますが、このサイズの雲は自然界にもあるのでしょうか?
川村:ありますが、地表に立っている私たちが目視するにはある程度の大きさが必要です。数10mぐらいはないと、判別できないのではないでしょうか。
ただ、近づきすぎると今度は輪郭が曖昧に見えてしまいます。飛行機に乗っているときを思い出してほしいんですが、機体が雲の中を通過する瞬間って、乗っている私たちにはわかりづらいですよね。筋斗雲のサイズだと、近いと輪郭が曖昧になるし、遠いと小さくて見つけられないので、私たちが見つけるのは難しいと思います。
ーー悟空が大きな筋斗雲から一人分をちぎるシーンがありますが、このように「さわれる雲」というのはあるのでしょうか?
川村:高い山に登ったときに、視界に霧がかかることがありますよね。そういうとき、服が湿ったり、肌がじっとりしたりすると思います。これは雲の中に入っている状態なので、そういう意味では、登山者の方は皆さわったことがあるのかもしれませんね。
ーー手触りは感じられなくても、「雲にさわる」こと自体はできるんですね! 筋斗雲は見た目が黄色いですが、現実でも黄色の雲はあるのでしょうか?
川村:そうですね……まず、雲そのものは常に透明なんです。「ミー散乱」といって、雲にあたった太陽光が反射した結果、私たちの目に白色に見えているだけなんですね。雲の高度が低かったり、大量の雲粒を有していると、太陽光を遮って灰色や黒っぽく見えます。
黄色っぽく見えるのは、日の出や日の入りなど太陽高度が非常に低いときならあり得るでしょう。
ーー筋斗雲は、自由自在に空を飛ぶことができるところも魅力ですが、現実の雲が浮いている仕組みについても知りたいです。
川村:現実の雲が浮いているのは、「速く落ちることができない」のと「すぐに消えてしまう」からですね。
雲粒は、0.01μmという非常に小さいエアロゾルが核となっています。それくらい小さいとまっすぐ落ちることができず、いろんなものにぶつかりながら落下するんです。
すると、地面に落ちるのにすごく時間がかかって、1時間に10mぐらいしか落下できません。しかも、小さいので一定の高さまで落ちると、すぐに蒸発して消えてしまいます。だから、我々から見るとずっと浮いているように見えるんです。
ーー浮いているのではなく、落ちられないだけなんですね! 雲の仕組みにも興味がわいてきます。
ーー筋斗雲は非常に速いスピードで飛ぶことができますが、実際の雲はどれくらいのスピードで動くのでしょうか?
川村:雲は基本的に風を受けて流されているだけなので、風の速さと同じぐらいです。
ただ、上空だとその風が非常に速いんですよ。たとえば「ジェット気流」と呼ばれる風は、日本の上空では(偏西風を受けて)秒速100mを超えてくるので、そこで浮かんでいる雲もものすごい速さで移動することになります。
ーー筋斗雲に乗っている悟空や悟飯は、超スピードの風とともに移動していたのかもしれないですね。
川村:一般的に、速度が2倍になると空気抵抗は4倍になるので、身体にかなりの負荷がかかっているとは思います。私たちなら耐えられないでしょう。悟飯は筋斗雲の上に立って移動しているシーンがありますが、私たちの場合は寝そべって、空気の流れに逆らう部分の面積を減らす必要があります。
新幹線が流線形なのは、同じように面積を減らして空気抵抗を抑えつつ、お客さんをたくさん乗せるためなんです。成層圏だと空気も少ないので抵抗は10分の1ぐらいになりますが、それでも立つよりは横になる方がいいですね。
ーー悟飯たちが猛スピードで飛ぶことで、まわりの大気の状態に影響を与えてしまったりはしないのでしょうか?
川村:このときの悟飯は最も空気抵抗を受ける姿勢で飛んでいるので、おそらく通過した後の空気が乱れて、渦が発生します。多かれ少なかれ、その渦が周囲の雲に影響することはあるでしょうね。
たとえば飛行機が通過した後は、空気が乱れています。気象条件が合うとその乱れが可視化され、私たちが「飛行機雲」と呼ぶ現象が起こります。
ーーということは、悟飯たちが飛んだあとに飛行機雲が生まれている可能性も……?
川村:いえ、悟飯は飛行機と違って水蒸気やエアロゾルとなる排気ガスを出さないですよね。なので、飛行機雲をつくったり空気を汚したりすることはありません。
ーーなるほど……! 最後に、もし筋斗雲に乗れるとしたら、川村先生ならどんな使い方をしたいか教えてください。
▲ブルマやクリリンは乗れなかった
川村:竜巻を見に行ってみたいですね! 竜巻は発生してから数分~10数分ほどで消えてしまうので、なかなか現物を見に行けないんですよ。
筋斗雲のスピードならすぐに近くまで行けると思うので、もし乗れるなら、竜巻の調査に行ってみたいです。
ーー大変おもしろかったです。本日はありがとうございました!
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