2023.03.16
漫画やアニメ好きとしても知られる、お笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気さん。
少年漫画だけでなく、青年漫画から少女漫画まで、幅広い作品を楽しんでいる岩井さんから見たドラゴンボールの魅力とは?
お笑い芸人である岩井さんならではの視点で、ドラゴンボールの「ギャグの面白さ」を語っていただきました。
——ドラゴンボールとの出合いを教えてください。
岩井勇気(以下、岩井):父親が「(週刊少年)ジャンプ」を買ってたんですよね。ほかにも週刊誌をめちゃくちゃ買ってて。少年誌だけじゃなく、青年誌もありましたね。
——漫画を読む環境はかなり整っていたんですね。
岩井:そうですね。子どものころ団地に住んでたんですけど、同じ団地に住んでる3つくらい年上の男の子が「ドラゴンボール」を読んだら回してくれたんです。その後はまた別の子に回して、みたいな。小学生でお金もないから、そうやって団地のなかで回して読んでいて。
あるとき、その男の子がコミックスを34巻くらいまでくれたんですよ。引っ越すからあげる、って言われて。俺が小学3年生くらいのときですね。それまでコミックスの1巻とかは読んだことがなかったので、小3のときに手に入れて、それから全部読みましたね。
コミックス第1巻と、ギニュー特戦隊が登場する第23巻を実際に手に取りながらインタビューに応えていただきました
——岩井さんは86年生まれですよね。子どものころにちょうどTVアニメ「ドラゴンボールZ」が放送されていたと思います。アニメは観ていましたか?
岩井:確かに、アニメのほうが先かもしれないですね。幼稚園のときにギニュー特戦隊と闘っているところが放送されていて、真似をしてました。5人集めて、漫画を見ながらポーズをチェックして。
——ギニュー特戦隊が登場するフリーザ編では、バトルもどんどん激しくなっていきます。当時、観ていて怖くなかったですか?
岩井:リクームが一番怖かった印象がありますね。うん、ここのシーン。ここが一番怖かった。
岩井:ぼろぼろになっても飄々(ひょうひょう)としている感じが……絶望的だったんですよね、勝てる見込みがなさそうに見えて。ギニューとの闘いになると、悟空もいるしいけるんじゃないかって思えたんですけど、リクームとの闘いは「これ、もう終わったな……」と思いましたね。
——アニメを見て、「週刊少年ジャンプ」で連載を読み、その後コミックスをまとめて読む機会があるわけですが、どのあたりから本格的にのめり込みましたか?
岩井:「ジャンプ」を読んでたころから、もうのめり込んでました。「ジャンプ」に掲載されていた扉絵を切り抜いて、とっておいたりして。たまに扉絵で悟空と悟飯の日常が描かれたり、悟空がおしゃれな服を着てたりするんですけど、それもいいんですよね。
岩井:まず、ブルマがおしゃれっていうのがありますよね。ブルマって、だいたい着ている服に「ブルマ(BULMA)」って入ってるんですよ。これ、ブランドを展開してるんじゃないかと思いますね。カプセルコーポレーションの財力があればできますから。
——そこまで想像したことはなかったです(笑)。確かにブルマなら自分のブランドを持っていてもおかしくはないですね。岩井さんが当時好きだったキャラクターは誰ですか?
岩井:ブルマは好きでしたね、かわいいキャラクターとして。バトルで活躍するキャラで好きなのは、やっぱりベジータです。
俺、ドラゴンボールはこのへん(ギニュー特戦隊が登場するあたり)から入ってるんで、割とはじめからベジータは仲間みたいな感覚で。小3のときに漫画をまとめて読んで、ベジータが敵だったころのことを知って。
——ベジータの過去の話を読んで、どう思いましたか? 実は悟空たちはかなりひどい目に遭っているわけですが……子ども心に「許せない!」とか、裏切られた気持ちになったりしませんでしたか?
岩井:許せないというより、幼いなと思いましたね。ベジータは……なんていうんですかね、戦闘しかできない不器用な感じが好きなのかもしれないです。きっと、ブルマもそういう気持ちだと思うんですよ。「この人は闘うことしかできない、少年のまま大人になった人なんだ」って。
特に好きなのが、セルの第二形態と闘ったときで。ベジータが急に強くなったことに驚いたセルから「きさまはベジータだろ!?」って言われて、「ちがうな……」「オレは……超ベジータだ!!」って答えるんですよね。それを聞いたセルが「なんだそれは……!?」って戸惑う(笑)。
もう、めちゃくちゃ自分のことを推してますよね。だって、強くなった「状態」のことを聞かれてるのに、自分自身のことを答えちゃってるわけで。そういうところが好きですね。だから、ベジータに対する気持ちは「母性」みたいな感じなんだと思います。
——「オレは……超ベジータだ!!」と言われてセルが戸惑う様子は、言われてみるとちょっと面白くもありますね。
岩井:そう、そこがいいんですよね、ドラゴンボールって。一見すると真面目なシーンも、ちょっとボケとして描かれていると思うんです。で、ツッコミがない。明確にボケて、ツッコんで、っていうお笑いのくだりをやっているところはなくて。
例えば、ドクター・ゲロと人造人間19号が現れたとき、ヤジロベーだけ闘いの場に行かないっていうシーンがありますよね。地球がピンチのときになんで行かないの、ってブルマが問い詰めると「飛べねえんだよ オレは…」って言うんですよ。ヤジロベーは舞空術ができないから。それを聞いたブルマは何も言えなくなって「………」みたいな。
残念な雰囲気をつくり出して、状況で笑わせるのがすごく上手くて。やっぱり鳥山明先生はギャグ漫画を描いていた人だなあ、と思わされますね。
岩井:界王様に「シャレで笑わせてみろ」って言われたときの、悟空の「フトンがふっとんだ」なんて普通なら激スベりする場面じゃないですか。
でも界王様は「ぷぷぷーっ!!!」って笑い出して、全員がボケになってるんです。読者にツッコませている感じがするというか。それって、漫画だと結構難しいと思うんですよ。やっぱり保険をかけて、誰か別のキャラクターにツッコませたくなっちゃうはずなんです。「ここ、面白いですよ!」っていう記号として。でもドラゴンボールはボケきってて、そこがめちゃくちゃ面白いんですよね。
岩井:セルゲームのときもそうですよね。10日後に武道大会を開催するってなって、悟空たちが修行している間、セルはリングで待ってるんですけど、「10日はながすぎたな」ってぽつんと寂しく立っているコマがあったりして。普通、セルみたいなラスボス級の敵は残念な感じにならないじゃないですか。
——10日後を真面目に待っているセルの姿はかわいいですよね。かといって「いや、素直に待ってるのかよ!」みたいなツッコミはない。
岩井:そうそう。「ここは本当に面白いんだ」っていう確信というか、明確なロジックが鳥山先生にはあるんでしょうね。
——さまざまな漫画やアニメ作品を楽しんでいる岩井さんから見て、ドラゴンボールの魅力はどんなところにありますか?
岩井:ギャグが面白いっていうのは、確実にあります。
普通、人ってツッコまないですよね。普段生活していて「いや違うだろ!」とか大声で言わないじゃないですか。ボケて、ツッコんで、というのはお笑いの世界の約束事でしかないわけで。だから、そういったお笑いの記号が漫画の中に入っていると、俺は違和感を感じちゃうんですよね。
——一般の読者にはない感覚かもしれませんね。普段、テレビなどでお笑いを見慣れている人ほど、違和感がないのかもしれません。
岩井:気づかないのかもしれないですね。俺も子どものころはそんなこと思わなかったので。
ツッコミをはっきりと描いてる漫画は、実は結構あるんですよ。今まで見たなかで最高潮のものだと、漫才でよく見る、手の甲で相手の胸を叩くような動きをしてるものがありましたからね。これって、本来は舞台で隣に相方がいるから成り立つ動きじゃないですか。
ドラゴンボールだとブルマがツッコミ役のように見えるシーンが多いですけど、キレる状況があるからそういう台詞を言ってるだけで。感情が動いてないのに、形式としてツッコんでいる、みたいなことはないんですよね。
——今のお笑いの話のように、大人になってから解釈や印象が変わったキャラクターはいますか?
岩井:悟飯ですね。子どものころ、悟飯のことは純粋に格好いいと思ってました。セルゲームで最後に覚醒するところとか、格好いいじゃないですか。
でも、大人になってからよくよく読み返してみると、ちょっとピッコロに懐きすぎてるな、と。セルゲームに臨む前、精神と時の部屋から出てきたときに、悟空と悟飯は服を着替えますよね。悟空はもともと着てた道着を選ぶんですけど、悟飯はピッコロと同じ服がいいって言うんですよ。
悟飯も悟飯ですけど、ピッコロもちゃんと断れよ!と思いましたよね。「お前の父親は悟空だ。今まで一緒に修行もしてきたんだろ」って。急に親心みたいなものが芽生えたのか、ピッコロは普通に自分と同じ服をあげるんですよ。いや、お前そんなやつじゃなかっただろ、世界を征服しようとしてただろ、って(笑)。
——岩井さんが自分を重ねられる、共感できるキャラクターはいますか?
岩井:誰だろうな……ドラゴンボールにはいないかもしれないですね。
——自分とは違うタイプだけど、なれるものならなりたい、「憧れ」みたいなキャラクターはいますか?
岩井:バーダックですね。台詞も全部覚えてました。フリーザと対峙するシーンは、小学校のときにめちゃくちゃ真似しましたよ。
バーダックには、男気があるというか。フリーザには絶対に敵わないのに、仲間がやられたからって一人で倒しに行こうとするところとか、めちゃくちゃ格好いいですよね。
——その憧れには、どんな思いが含まれているんでしょう? バーダックのようにありたい、たとえ不利な状況でも一人で立ち向かうんだ、というような?
岩井:そうですね。体制に飲み込まれないというか、相手がどんなに強くても間違っていたら言う、みたいな。自分が間違っていないと思ったら、人と対立することもいとわない。そういうところがバーダックはすごいな、と思いました。
——最後の質問です。もし今ドラゴンボールを7つ手に入れたら、何を望みますか?
岩井:不老不死ですね。俺、死にたくないですもん。世の中がこの先どうなるのか、どう変わっていくのか、知りたいです。
岩井勇気(いわい・ゆうき)
1986年、埼玉県生まれ。 幼稚園からの幼馴染である澤部佑とお笑いコンビ「ハライチ」を結成し、2006年にデビュー。 テレビ、ラジオなどさまざまなメディアに出演中。乙女ゲーム「君は雪間に希う」(アイディアファクトリー)の原作・プロデュースを担い、ヤングマガジンにて原作漫画「ムムリン」(講談社)を連載、エッセイ集「僕の人生には事件が起きない」「どうやら僕の日常生活はまちがっている」(ともに新潮社)はベストセラーになるなどクリエイティブな才能を発揮している。
【Twitter】 @iwaiyu_ki
取材・文:大吉紗央里
撮影:志田彩香
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