2023.02.23
2003年に発売されたPlayStation2(PS2)のゲームソフト『ドラゴンボールZ』。以降『Z2』『Z3』と続く3部作は、国内で累計約150万本、海外で同約700万本のメガヒットを記録しました。このシリーズにハマり、熱中した思い出のある人も少なくないでしょう。
孫悟空をはじめとしたキャラクターがアニメさながらのリアルな姿で登場し、縦横無尽に活躍する本シリーズ。その開発をプロデューサーとして主導した内山大輔さん(株式会社バンダイナムコスタジオ 代表取締役社長)は、「ドラゴンボールZのファンに、この世界を思う存分楽しみ尽くしてほしいと考えていた」と振り返ります。
本記事では、ゲーム開発者としての内山さんの歩みとともに、ドラゴンボールにかける熱い思いを聞きました。
※取材は新型コロナウイルス感染症の予防対策を講じた上で実施しました。
語り手:内山 大輔さん
株式会社バンダイナムコスタジオ代表取締役社長・バンダイナムコエンターテインメント取締役。CE事業部事業部長。1994年に株式会社バンダイ入社。コンシューマゲームのプロデューサーとして、「ドラゴンボール」や「NARUTO -ナルト-」などといったキャラクターゲームほか、さまざまなゲーム開発に参画。過去には、「.hack」シリーズの初代担当プロデューサーとして、クロスメディア・プロジェクトも立ち上げた。
・聞き手:多田 慎介
1983年生まれのフリーライター。四人きょうだいの末っ子。兄たちの影響で、物心ついたころにはアニメ『ドラゴンボール』を毎週欠かさず見るようになっていた。好きな敵キャラクターは栽培マン。
ーー内山さんとドラゴンボールの出会いについて教えてください。
内山:小学生時代にさかのぼります。私が小学2年生のときに、週刊少年ジャンプで鳥山明先生の『Dr.スランプ』の連載が始まりました。子どもながらに、その第1話が衝撃的だったことを覚えています。アラレちゃんの世界観は1970年代までの熱血系漫画とは一線を画していて、アメリカンポップカルチャーのようなテイストや、鳥山先生のとてつもない画力に引き込まれたんです。
そして私が小学5年生のときにドラゴンボールの連載がスタートしました。 「アラレちゃんを描いている人の新作だ!」とすぐにわかりましたよ。相変わらず登場人物が魅力的で、さらにテクノロジーの描き方も素敵で。初期の頃は、「ホイポイカプセル」で飛び出すさまざまな乗り物にあこがれていました。
やがてアニメ化が始まり、孫悟空が大人になってドラゴンボールZへと物語が進んでいく中で、私も中学生、高校生と成長し、多感な時期をドラゴンボールとともに過ごしてきました。
ーードラゴンボール連載スタート時からのファンだったのですね。そんな内山さんがゲーム業界を目指したきっかけは?
内山:同じく小学生時代に、あの「ファミリーコンピュータ」が登場したんですよ。当時の小学生にとってファミコンは神のマシン。スーパーマリオブラザーズや魔界村、ドラゴンクエスト、ゼビウスなど、人気ソフトが次々と発売されていました。
ところが、私はずっとファミコンを買ってもらえなかったんです。当時はテレビゲームといえば「勉強しなくなる」「運動ができなくなる」「視力が落ちる」と大人たちの目の敵にされていて、私は週に一度、いとこの家でファミコンに触らせてもらう程度でした。
ゲームをやりたくて仕方ないのにやれない。その反動からか、 中学時代には自分で漫画や小説を書き始め、ゲームの攻略記事なんかも書いていました。そういえば「ゲームブック」も自分で作っていましたね。ページごとにシナリオを書いて、フローチャートを設計して……。その意味では、かなり早い段階で作り手側に回っていたのかもしれません。
結局、私は大人になるまで自分のゲーム機を手に入れることができず、ゲームがやりたくて仕方のない気持ちを引きずったまま、とにかく面白いゲームを生み出したくてこの業界に入ったんです。
ーーバンダイ入社後はどのような仕事を担当していたのですか?
内山:マルチメディア事業部(当時)というゲーム関連の部署に配属され、外部の開発会社と協力しながら、開発実務以外のことは何でもやっていました。営業に宣伝活動、プラットフォーマーとの交渉、プロモーションビデオの編集……。連日デバッグを担当していた時期もあります。
また、ジャンプ作品のプロデュースをすることが多い部署だったので、集英社の編集部にもしょっちゅう足を運んでいました。編集部の方々は作品の世界観や原作者の先生の思いを本当に大切にしていて、私たちが開発するゲームに鋭いフィードバックをいただくこともしばしばでした。
当時はじっくりと考えている暇もありませんでしたが、今思えばゲーム作りに関わる一通りのことを経験させてもらっていたんですよね。
ーードラゴンボールのゲーム作品を手掛けることになったきっかけは?
内山:入社1年目に、スーパーファミコンの『ドラゴンボールZ 超武闘伝3』でアシスタントを務めました。その後はゲームボーイの『ドラゴンボールZ 悟空飛翔伝』も経験しています。
1997年にアニメ『ドラゴンボールGT』の放送が終了してからは、ドラゴンボールのゲーム企画も落ち着いていきました。ジャンプ関連では新しい連載作品のゲーム化が進んでいましたが、私は大人をターゲットに『北斗の拳』のゲームを開発し、これが結構ヒットしたんです。
子どものころにハマっていた作品を真面目に解釈して届ければ、ファンがきっとついてきてくれるはず。そんな実感を持っていた私に、当時の上司が「もう一度ドラゴンボールのゲームを作ってみないか?」と声をかけてくれました。
ーーPlayStation2の『ドラゴンボールZ』(2003年)、『ドラゴンボールZ2』(2004年)、『ドラゴンボールZ3』(2005年)へと続く流れですね。
内山:第1作の『ドラゴンボールZ』は、もともと2002年の発売に向けて動き出しました。でも2003年に時期が遅れたことによって、結果的には「ここしかない」というベストなタイミングで出すことができました。
ーー当時の開発秘話を教えていただきたいです。
内山:PS2版の開発にあたり、私はアニメのリアリティを追求して、野沢雅子さんをはじめとした伝説の声優さんたちにご協力をいただきたいと考えていました。橋渡しをしてくださったのは東映アニメーションの森下孝三さん(現・代表取締役会長)です。森下さんの声がけによって、ドラゴンボールZの声優さんたちが同窓会のように和やかな雰囲気の中で、楽しく演技をしてくれました。
こうして順調に営業や宣伝の計画も立てていた折、監修をいただいていた集英社の編集部から、根本的な部分にフィードバックを受けたのです。
ーーもしかすると、幻の作品になっていたかもしれない?
内山:そうかもしれません。ただ、何とかこの作品を形にしたいという一心で、いくつかのシーンについて宿題をいただき、開発陣で見直しました。当初は2002年夏を予定していた発売日を延期。もう一度ドラゴンボールZの世界観と向き合い、一生懸命に作り直して、3カ月後に再び集英社を訪れました。
その際には、私たちがどのようにドラゴンボールZを再解釈し、どう表現し直したのかを伝えるために、分厚いプレゼン資料を準備していたんです。ところがプレゼンを始めてからものの10分程度で、作り直したシーンを見た編集部の方々からOKが出ました。拍子抜けするくらいにあっさりと。
今にして思えば、あれは 「作品の思いを本気で受け止めて表現してほしい」というメッセージだったのだと思います。
ーーそして2003年、いよいよPS2版『ドラゴンボールZ』が発売され、大きな反響を呼ぶこととなります。
内山:当時はちょうど、ドラゴンボールのDVDBOXや、コミックスの完全版が相次いで発売されていた時期でもありました。ドラゴンボールのリバイバルが起きていたんです。
2002年12月に原作コミックス完全版、そして明けて2003年2月にPS2『ドラゴンボールZ』と、2003年3月に『DRAGON BOX』(DVDBOX)、期せずして完璧な並びでの発売となりました。結果論ではありますが、最高のタイミングで世に華々しくゲームを送り出すことができました。
ーー続く2004年の『ドラゴンボールZ2』では、3DCGをアニメさながらにリアルに表現する技術「ドラゴンシェーディング」を取り入れています。どのような着想や試行錯誤を経てこの表現にたどり着いたのでしょうか。
内山:第1作で大きく立ち上がったチャンスを無駄にしないよう、さらに素晴らしい続編(Z2)を2004年2月7日に発売すると決めていました。開発陣がPS2の製品や、開発の技術的な知識を深めていったこともあって、第1作では表現しきれなかったキャラクターの魅力をより突き詰めたいと思っていたんです。
そのために実現したのがドラゴンシェーディングです。これは「トゥーンシェーディング」と呼ばれる手法を応用しており、基板となるキャラクターのモデルにさらにアウトライン(輪郭線)だけのモデルを重ねる当時は高度な技術。そうすることでキャラクターが抜群にリアルに、そしてかっこよくなります。
ドラゴンシェーディングというからにはより特別じゃなければいけないということで、『ドラゴンボールZ2』では、さらに3個目のホワイトのハイライトも重ねています。
それだけキャラクターモデル数が増えるわけですから、メモリ使用量はとても重くなります。知恵をいろいろと重ねてバランスを調整し、完成にこぎ着けた際には 「勝った!」と思いましたね。キャラクターが本当にかっこよくて、我ながら感動を覚えるほどでした。
ーーそのキャラクターが縦横無尽に動き回る爽快感もまたシリーズの魅力です。2005年の『ドラゴンボールZ3』では、とうとう孫悟空が舞空術を使って地球上を自在に飛び回るようになりました。この演出に心を奪われたファンも多いのでは。
内山:『ドラゴンボールZ3』では第2作、第1作からの良さを生かしながら進化させ、集大成的な作品にたどり着けたと思っています。
第1作の段階では、やりたくても技術的に実現できない部分が多々ありました。そうした開発陣の熱意を結集し、 「ドラゴンボールZのファンに、この世界を思う存分楽しみ尽くしてほしい」という思いを込めて送り出しました。
ーー改めて、PS2版「ドラゴンボールZ」3部作の販売実績を教えてください。
内山:シリーズ累計では、国内で約150万本、海外で約700万本を販売しました。
第1作の段階ではどれくらいヒットするのか予測の難しいところでしたが、結果的には初回予約本数に加えて3回の追加注文をいただいています。私たちが業界用語で使う「注残」(ちゅうざん:注文に生産が追いついていない状態)に至ってしまうほどでした。
また、第1作から海外パートナーとも契約を結び、英語をはじめ5か国語に対応して販売しています。当時はアメリカのケーブルテレビでアニメのドラゴンボールZがずっと放映されていたこともあり、私たちの想定を大きく上回るヒットとなりました。世界中のドラゴンボールファンがこの作品を待ってくれていたのだと思います。
ーーこれほどまでの成功を収めながら、なぜ3部作で完結したのですか?
内山:『ドラゴンボールZ3』で終えることは、もともと決めていました。第1作で力強く立ち上がり、2作目でドラゴンシェーディングも含めた進化を成し遂げ、3部作の最後にやりたいことを全て実現する。最初からそう計画していたんです。
もし『ドラゴンボールZ4』を作っていたら、さらなる継続シリーズ化を止められなくなっていたかもしれません。やがて担当者が変わり、開発当初の情熱も薄らいでいってしまうかもしれない。それがシリーズを重ねるゲームの宿命であり、弱点でもあるんです。
私たちはPS2『ドラゴンボールZ』のシリーズに本気で向きあっていたからこそ、そうした道はたどりたくないと思っていました。一方、ドラゴンボールのゲーム開発への情熱は新たなチームに引き継ぎ、後の『ドラゴンボールZ Sparking!』へとつながっていきました。
ーーゲームクリエイターを育成する立場として、内山さんは今後、どんなドラゴンボールゲームに期待しますか?
内山:敵キャラクターを主軸にした作品も面白そうですよね。フリーザ軍を指揮して宇宙征服に挑むゲームとか、レッドリボン軍の経営シミュレーションゲームとか。
ーーこれまでにない切り口ですね。私もフリーザ軍やレッドリボン軍を指揮してみたいです!
内山:ドラゴンボールの大きな魅力は、強大な敵キャラクターがどんどん登場すること。恐ろしいレッドリボン軍を壊滅させたと思ったらマジュニアが出てきて、それをようやく倒したら今度はラディッツが地球にやってきて……。敵がどんどん強くなることがたまらないんですよね。
私は個人的に、 世界最高のキャラクターデザインはフリーザ様の第4形態だと思っています。そしてあの無慈悲な強さ。あこがれますよね。誰かフリーザ軍のゲームを実現してくれないかな(笑)。
ーー数あるドラゴンボールの名シーンの中で、内山さんが「最高の瞬間」を挙げるとしたら?
内山:私の中での最高の瞬間は、原作コミックス27巻でクリリンがフリーザにやられてしまい、悟空が超サイヤ人になってフリーザを見つめるところです。このシーンで、ドラゴンボールZの全てが伝わる。私はそう思って、第1作のパッケージにもこのシーンを選びました。
何も説明しなくても、この瞬間の悟空がパッケージになっていれば、ファンはこのゲームが何なのかを理解してくれるはず。そんな究極のリスペクトを形にしたのがあのパッケージなんです。
ドラゴンボールのジャンプコミックスは全42巻あります。私は新人の頃から企画書を作るたびに読み返してきたので、「何巻の何ページにどんなシーンがあるか」を覚えているほど。そうやって仕事で何百回と読んできたドラゴンボールなのに、今でもページを開くたびに新鮮に感じます。ドラゴンボールって、本当に不思議な作品ですよね。
写真:安井信介
このサイトは機械翻訳を導入しています。わかりにくい表現があるかもしれませんが、ご了承ください。
投稿する
投稿内容確認
上記の内容で投稿しますか?
返信する
返信内容確認
上記の内容で投稿しますか?
本当に削除しますか?
報告完了
投稿エラー
ユーザーをミュートします
ミュートしたユーザーのコメントは
コメント欄に表示されなくなります。
※ミュート解除はMYPAGE内のコメント管理から行えます
返信する
返信内容確認
上記の内容で投稿しますか?
修正する
投稿する
投稿する
投稿内容確認
上記の内容で投稿しますか?
修正する
投稿する