2023.02.09
ドラゴンボールにはさまざまな恐竜が登場しますが、なかでも「サイヤ人編で孫悟飯に尻尾を食べられてしまった恐竜」を印象深く覚えている方は、多いのではないでしょうか。ピッコロによって荒野に置き去りにされた悟飯は、孤独の中で強くなり、凶暴な恐竜も軽くいなせるまでに成長します。そしてそのしっぽを切って、焼いて食料にしてしまうのです。
悟飯のたくましい成長が感じられるエピソードですが、改めて原作を読んでいて、「そもそも恐竜の肉って食べられるの?」という疑問がわいてきました。そこで今回は、福井県立大学恐竜学研究所助教の服部創紀先生に、恐竜の生態とその食べ方について伺いました。
語り手:服部 創紀先生
福井県立大学恐竜学研究所助教。東京大学大学院理学系研究科博士課程満期退学の後、岐阜県博物館学芸員と福井県立恐竜博物館の研究職員(現在も兼務)を経て現職。 博士(理学)。 恐竜を中心とした主竜類の比較解剖学が専門。
聞き手:まいしろ
エンタメ分析家。データ分析やインタビューを通して、なんでもないことを真剣に調べてみた記事をたくさん書いてます。よく書いているのはYahoo個人、デイリーポータルZなど。音楽・映画・漫画が特に好き! @_maishilo_
・悟飯が戦った恐竜は、ティラノサウルスなどを含む「獣脚類」に似ている
・恐竜の肉はジューシーだが食べるときは焼いた方がいい
・いつかこんな恐竜が本当に見つかるかもしれない
ーー服部先生は普段どんなお仕事をされているのでしょうか?
服部:恐竜の研究者として、福井県立大学の助教と福井県立恐竜博物館の研究員をつとめています。講義や博物館の展示のほかに、夏になると福井県で化石の発掘をしています。
ーー化石の発掘! けっこう出てくるものなんですか?
服部:出てきますよ! カメのような恐竜以外の化石も入れると、ひと夏で2000点ぐらいは見つかります。暑いけれど、やりがいのある仕事です。
ーー非常に楽しそうですね! では本題のドラゴンボールの恐竜についてお聞きしたいのですが、まず、悟飯が修業で戦った恐竜はどういう種類の恐竜でしょうか?
服部:これは現実の恐竜でいうと、「獣脚類」という分類の恐竜に近いですね。ティラノサウルスなどと同じ肉食の恐竜のグループで、いまの鳥類の先祖でもあります。
恐竜の分類図。悟飯を襲った恐竜は、竜盤類の中の獣脚類に似ている
ーーいまも子孫が生き残っている恐竜なんですね!
服部:前あしが小さいので、獣脚類のなかでも最初の方に進化してきた恐竜です。こういうタイプの獣脚類自体はそれぞれの時代にいたことがわかっていますが、この恐竜のように、大きい体に対して小さな前あしがついているのは、鳥類とは少し遠縁の恐竜の特徴ですね。
ーー体格から進化の段階がわかるんですね。手が小さいのはなぜでしょうか?
服部:私たち人間は手を使ってものを食べるので、「腕が長くて、手が大きい方が便利なのでは?」と思ってしまいますよね。でも、ほとんどの動物は頭を食べ物に近づけてものを食べるんです。だから手はそこまで必要ではないし、小さい方が無駄なカロリーも使わず効率的なんです。
ーーなるほど! 頭には大きなトサカのような角がついていますが、これは何のためなのでしょうか?
服部:おそらく、求愛や威嚇のための角でしょう。一部の草食恐竜だと角の中が空洞になっていて、金管楽器のように音を鳴らすこともあったんです。
ただ、肉食恐竜はあまりそういう角を持たないんですよ。だから、この恐竜の場合も実際の機能というよりは求愛、つまり見た目をよくするためのものだと思います。
ーーこの恐竜は「ガルルル…」「ギャーッ」といったガ行の鳴き声をよく出します。実際の恐竜もそうだったのでしょうか?
服部:恐竜の声帯はいまのワニや鳥のものに近いので、ワニや鳥が出せる声は基本的に出せたはずです。サギのように「ギャー」と鳴く鳥が実際にいるので、理論的にはリアリティのある鳴き声だと思いますよ。
ーーなるほど! この2コマだけで、たくさんのことが読み取れておもしろいです!
ーー悟飯はためらいもなく恐竜を調理しています。実にシンプルな直火焼きで食べるようですが、そもそも恐竜は食べられるのでしょうか?
服部:食べられるし、けっこうおいしいと思います。おそらく、現在でいう鶏肉やワニ肉に近いでしょう。少し脂っぽくてジューシーな味がしたはずです。
野生なので、やはり生食は危険でしょうね。その点きちんと火を通している悟飯は、幼いながらに賢いです。個人的には塩気がほしいので塩コショウをふりたい所ですが……。
ーー修業中ですから、調味料なんてものはないですね。悟飯はしっぽを食べていますが、恐竜を食べるとしたらどの部分が一番おいしいのでしょうか?
服部:この恐竜の場合は後ろあしだと思います。通常の恐竜に比べて、ふとももが非常に太いんですよ。ここが一番肉があっておいしいはずです。
ーー服部先生が食べてみたい恐竜のパーツはありますか?
服部:どうでしょう……。砂肝はおいしいかもしれませんね。専門的には「砂嚢(さのう)」と呼ぶところですが、砂利などを飲み込んで、消化できなかったものをすりつぶす器官なんです。
恐竜によってはその砂嚢があったことがわかっているので、すごく固いと思いますが食べてみたい気持ちはあります。
ーー悟飯が食べている恐竜は、恐竜の中ではおいしい方なのでしょうか?
服部:うーん。これは肉食恐竜ですが、どちらかといえば草食恐竜の方が、馴染みのある味を楽しめたと思います。肉の味はその恐竜が普段何を食べていたかに関係するので、一概には言えないですが、もっとおいしい恐竜はいたはずです。
ーーなるほど。恐竜グルメ、どんどん興味が湧いてきます……!
ーー味についてお聞きしてきましたが、この恐竜の生態についてもおうかがいしたいです。悟飯は恐竜から走って逃げていますが、私たちも恐竜に追いかけられたら走って逃げられるスピードなのでしょうか? それとも、悟飯がすごいのでしょうか。
服部:一般人だとかなり厳しいと思います。ティラノサウルスはだいたい時速18km〜40kmで走ったとされていて、だいたい原付ぐらいの速さなんです。
こういう大きい恐竜はすばしっこくはないのですが、歩幅が大きいんです。ですから見た目にはゆっくり動いているように見えても、ちょっと早歩きされるだけで人間はあっという間に捕まってしまうんです。
ーーでは、サイヤ人ではない普通の人間がここに放り込まれたら、すぐに食べられてしまうのでしょうか?
服部:実はそうでもないんですよ。肉食恐竜は体が大きいので、人間のように小さな動物を食べてもまったく量が足りないんです。しかも、小さい方がすばしっこいので、捕まえるのにエネルギーを使ってしまうんですね。
だから、恐竜は普通、草食恐竜のような大きくてのろい動物を狙うんですよ。 悟飯がここで襲われたのは、かなり珍しいことだと思います。
ーーこの恐竜は、悟飯を見つけたときすぐに襲いかからずに、近づいて少し様子をうかがう仕草を見せました。
服部:普通は獲物に気付かれないようにすぐ襲うはずなので、悟飯を食べものではなく「敵」だと思ったのかもしれません。食べたかったというより、とにかく自分のナワバリから排除したかったという方が、動機としては考えられます。
もちろん、何らかの理由で長らく食事にありつけておらず、効率の悪い小さな生物でもいいからとにかく食べたいぐらい、お腹がすいていた可能性もありますけどね。
ーー悟飯はその後、恐竜のしっぽを剣で一刀両断しています。
服部:悟飯はもともと一般的な人間よりはるかに潜在能力があったと思いますが、それにしても「剣で切れるしっぽ」というのは相当やわらかいと思います。クジラのような水中の生物であれば、大きくてもやわらかいことがあるんです。でも、地上だと水分を逃さないように、だいたいの動物は表面がかたくて乾燥しているんですよね。
だからこれはすごく不思議なしっぽですよ。骨も少ないですし。剣で切ったところから血が出ていないのも特徴的なんですよね。
ーー確かに血が出た様子はないですね。骨も真ん中に一本だけです。
服部:もしかしたらですが、これは過去に一度切り落とされて、再生したしっぽなのではないでしょうか。「自切」といって、トカゲなどが自分のしっぽを切るときに、周辺の筋肉を収縮させて血を止めることがあるんです。なので、この恐竜にはその機能が備わっているのかもしれませんね。
再生したトカゲのしっぽは、元通りのちゃんとした骨ではなく、シンプルな形状の軟骨を持っていることが多いんですよ。この恐竜は、一度どこかで切られたしっぽを再生して、また悟飯に切られてしまったんじゃないでしょうか?
ーーなるほど! 現実の地球にも、しっぽが再生する恐竜はいたのでしょうか?
服部:現状ではわかりませんが、実は恐竜という生き物は、週に1つくらいのペースで新種が見つかっています。(この恐竜と同じ種類の)獣脚類だけでも、月に1つはどこかで新しい恐竜が見つかっているんですよ。
どんな恐竜がいたかというのはまだまだ未知数ですし、いつかドラゴンボールに出てきたような恐竜が発見されるかもしれないですね。
ーー大変おもしろかったです。本日はありがとうございました!
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